Looking for You ! | ナノ


私の中のファンクラブポリシーとしては、柳くんを見守り、柳くんをお慕い、柳くんの周りに配慮し、柳くんが部活を清々しい気持ちで行えるよう陰ながらサポートする事である。そこに恋愛感情があるのか、と問われたらそれは即答できないだろう。彼はなんというか、触れてはならない神秘的なものだと考えてしまうからだ。私なんかが恋愛感情を抱くなんて恐れ多い…!ただ遠目に眺めていられるだけで十分なのである。だから直接的に関わろうなんて、ましてや関わりを持とうなんて考えていないのだ。

さっきまでは。


「(待って待って待って待ってちょっと待って)」


ぐるぐるぐるぐる。回る思考の中で考えられるのは何もなく、手に握り締めた分厚い本には手あせが滲み出ている事だろう。
現在絶賛中間考査の真っ只中。テストまであと一週間というので図書室に勉強しに来ていた私の隣に、「すまない、隣いいか?」と穏やかな声でそう語りかけてきた彼を私は見上げた瞬間、さっきまで取り組んでいた数学の公式がトイレに流されて行ったように消えてしまった。視線を軽く左右に巡らせると、どうやら私の隣しか空いていなかったらしく、柳くんは苦笑しつつ私を見下げている。


「(な、何か言わないと…!)ど、どどど、どうじょ!」


…最悪だ、噛んだ。最悪だ、死にたい。じわじわと熱くなる顔面に現実逃避の為に読み出した本をガバッと被せる。ついでにさりげなく窓側に身体を向けると、椅子に座った柳くんがくすりと笑った気がした。ほんと死にたい。


「(あああああああああ)」
「(面白いやつだな)」


真っ暗な視界の中で、確実に今日の出来事が黒歴史に上書きされたのを感じた。
 

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