――今日の最下位は残念、かに座のあなた!今日は朝から夜までいいことなしの最悪な一日になりそう。外出は控えて家で大人しくするのが吉!ラッキーアイテムはうさぎの抱き枕!
ふとつけてあったテレビを見ていると、おは朝占いが終わった瞬間に携帯が震えた。あー多分やつだな、とカチカチ操作していると、「今日は休む。うさぎの抱き枕を届けてくれ」との文面が。
「あいつ占いごときで学校休むのかよ。つかうさぎの抱き枕て…抱くの?抱いて寝るの?うっそマジかやべえ腹痛い死ぬっ」
青峰に電話しよう。思い立った私は軽く噎せながらアドレス帳から青峰の名前を出して通話ボタンを押した。数コールのあと、『あー?』という寝起き独特の低い声に不覚にもドキッとしたけど、それより腹痛い。
「ちょ、あお、青峰!今から緑間ん家行こ!」
『…みょうじ?つか何で緑間ん家…』
「あいつっ、あいつおは朝で外出るなって助言鵜呑みにして今日休むってメール来た!あと今ならうさぎの抱き枕抱いて寝る緑間が見れるブフッ!」
『…ツッコミ所はいろいろあっけどとりあえず面白そうだから行くわ』
「りょかいー」
通話を切って、緑間に今から行くとメールを返し押し入れからうさぎの抱き枕を引っ張り出して私は家を出た。さて、今日はサボりだ。
「……で、何でお前まで居るのだよ青峰」
「みょうじからうさぎの抱き枕抱いて寝る緑間が見れるって電話来たから」
「何だと…!?」
「きゃー真ちゃん怖いー」
「いいから早く抱いて寝ろよ」
「何故命令口調なのだよ!…まったく、お前達は馬鹿なのか?それごときの為に学校をサボるとは」
「いや、占いごときで休むお前に言われたくねーし」
「うん確かに」
「ぐっ…いいから抱き枕を寄越せ!」
「いーけど、押し入れから出したばっかで湿っぽいよ。抱いて寝るにはビミョーかも」
「だから何故寝る前提なのだよ!」
「……つかよ、何、それみょうじの使用済み抱き枕?」
「使用済みって…まあ、そうだね。でも昔は緑間も一緒に使ってたよね」
「ああ、昔だがな」
「…そーいや幼馴染みだったんだっけか?」
「まーね。いやあ昔の真ちゃんは可愛かった!のに…」
「哀れむような目で俺を見るな」
「…ふーん」
「え、ちょっと青峰何で抱き枕取んの」
「おい青峰、それは俺のなのだよ」
「いやちげーよ私のだよ」
「これ俺が貰うわ」
「…は?何を言って…」
「そうだよ青峰!抱き枕抱いて寝る緑間が見れるんだよ!」
「俺は寝んぞ!」
「…みょうじ、よく考えてみろよ。緑間がお前の使用済み枕抱いて寝んだぜ?お前の匂いが染み付いたこいつに緑間が欲情して一人寂しく自分を慰めてる所想像してみろよ」
「な…っ!青峰貴様何を」
「……うわあ」
「なまえも想像するんじゃないのだよ!」
「ごめん緑間、しばらく私に近づかないで」
「なまえ!?」
「つーわけだ緑間、ラッキーアイテムは貰ってくわ」
「じゃーあの、ごめん、お邪魔しました」
「なーみょうじ、サボんならストリート付き合えよ」
「えーいいけどマジバのシェイク奢りね」
「現金だなお前」
「いーじゃん。じゃ、決まりね」
「……いつか、殺す」
握り締めた拳に、冷たい何かが滴り落ちた。