青峰大輝という男の存在を知ったのは、中一の冬。たまたま通りかかった体育館に響く特有の音に、私は惹かれるがままこっそり覗き込んだ。そこには汗を流しながら褐色の良い男の子がひとつのボールを追いかけていた。
彼が噂の、なんとかの世代とかいうやつなんだろうな、とその時はただ漠然とそう思った。荒く息を吐きながらも懸命にボールを追う姿に、バスケ好きなんだなあ、とか、楽しそうにプレーするなあ、とか。ルールも碌に知らない癖に、簡単にゴールに吸い込まれていくボールを見て、バスケってすごいんだなあなんて思った。汗を流して、それでも一直線にボールを追いかけている彼に、何かに熱中する事ができるのがとても羨ましく思えた。
「緑間」
「何だ」
「バスケ部に褐色の良い子っている?」
「……、青峰か?」
「へー、青峰って言うんだ」
「何なのだよいきなり」
「んー、何でもないのだよ」
「真似をするな」
帰り道、緑間に聞いた名前を頭の中で繰り返す。ぶつぶつと説教混じりに呟く緑間を無視して、何となく、新学期が楽しみだと思った。
「(青峰…か)」
今思えば、多分この時から青峰の事が好きだったのかもしれない。何かに熱中して、一生懸命になれるもののあるあいつに、小さい憧れを持っていたのだろう。それがいつの間にか好きの感情に変わっていたなんて、笑い話にしかならないけど。
…だけど、あの試合を見た時、青峰が一番かっこよく思えたくらいには、好きなんだろうな。