キュ、キュ、と床を滑る音が軽く耳障りにも聞こえる体育館の上、観客用スタンドで私はぼんやりとそれを見ていた。周りには我が帝光バスケ部と相手校のバスケ部がぐるぐるに囲んで声援を送っている。
「うおっ!?青峰またいったー!今日調子よくねえ!?」
なんて声が飛び交ってつい息が漏れそうになる。青峰すげーだの黄瀬やべーだのエトセトラエトセトラ。確かに素人の私から見てもすごい、と思う。伊達にキセキの世代なんて呼ばれてない訳だ(さっきそう呼ばれてるって隣の子から聞いた)。
今日は青峰から練習試合があるから見に来いとの誘いがあった。元々バスケ部は見てみたいと思ってたから二つ返事で了承したものの、実際のバスケなんてありきたりなものだろうなと思った自分を今すぐ殴り付けたい。
「……すご、」
上から見てても目立つ青は存在感が半端ない。色が黒いからというのを抜きにしても、パスを貰った瞬間から相手ゴールまで目にも止まらぬドリブルで駆け抜けていく。真剣な眼差しの中に浮かべる笑顔にはほんのちょっとだけど、きゅんとした。素直にかっこいいとも。
「…頑張れ、青峰」
口から勝手に滑り落ちた言葉に、視線を送っていた青峰が振り返って、ニッと年相応の笑顔を見せるものだから、違う意味でどきっとした。
『当たり前』
そう口パクで表した彼がいつもより輝いて見えたのは、きっと私の贔屓目だ。