ふわふわ、ふわふわ。まるで浮いているような感覚に頬が緩む。意識が浮上する中で薄らと開いた目には、今まで夢に出ていた人物が緩く笑みを浮かべているものだから、これも夢?なんてぽつりと呟いてしまった。 「…お、やっと起きやがったか」 「んー…?」 「んーじゃねえよ。ったく、俺の膝占領しやがって」 はあ、と溜め息を吐いた阿近さんはふと苦笑しながら大きな手のひらを私の頭に寄越してゆうるりと髪を梳く。それが気持ち良くて目を閉じようとした瞬間、むにっと頬を摘ままれた。 「なに寝ようとしてやがる」 「だって阿近さんの手、きもちいいんだもん。…お膝は固いけど」 「…へえ?」 その声に、にやり、と阿近さんが不敵に口元を歪めたのが目を瞑っていてもわかった。…うわあどうしよう。と今更目が冴えてきた私はここで目を開ける勇気もなく、精一杯の抵抗として身を捩るも一瞬の浮遊感にぱちりと目が開いてしまった。 その瞬間はた、と身体が固まって思考がぐるぐると無限ループ。あれ、何で阿近さんの顔こんなに近いの、とか。阿近さんの後ろに天井見えるんだけど、とか。そんな事を考えながらぱくぱくと口を開ける事しか出来ない私に、目の前の彼はさぞ楽しそうに笑っていた。…あこれ実験体目の前に置かれた時の阿近さんの顔だ。……つまりは、 「(…食われる)」 いやいやいや、ちょっと待とうか阿近さんよ。死覇装の中に突っ込まれ身体をまさぐる腕を制しながら抗議を主張すべく口を開けるが、それを待っていたかのように薄い唇が私のそれを塞いで、熱い舌が口内を這い回る。 「んぁ、…っ、ぅんっ」 「……っ、ん」 鼓膜に届く水っぽい音が恥ずかしくていやらしくて、視界が膜で覆われていく。阿近さんの腕に添えていた手がずるりと落ちて、自由になった腕が腹部を撫でた。ん、と声を漏らした私に阿近さんは小さく笑って唇を離すと唾液で濡れた自身の唇をゆっくりと舐め取っていく。鋭く光った視線に、今私は捕食者の獲物なのだと悟った。 「…ったく、人の気も知らねえで」 「ふえ…?」 「お前が俺の膝占領してる間、俺が何思ってたのか知らねえだろ」 …お前、俺が男だって事忘れてんじゃねえよな? なんて低い声で囁かれたものだから、冷めかけていた熱が再浮上。とりあえずごめんなさい…と謝ると、わざとらしい笑みを携えた阿近さんが気にすんなと言ってきた。……、 「お前に俺が男だって事、教えてやっから」 なあ、名前? 途端ににやにやと口元を歪めた阿近さんにひくり、と頬が引き攣った気がした。いつの間にか胸にまで到達していた手のひらがむにむにと形を確かめるように触れているものだから、びくびくと身体が震えて声が漏れる。はあ、と熱っぽい息が吐き出されて、その気になってしまっている自分に羞恥にも似たものが込み上げる。 「…っ、あこ、さんの…ばかっ」 なんて、強がりでしかない言葉を吐きながら喘ぐ事しか出来ない私に、「お互い様じゃねえか」と色気を孕んだ声色で囁いた阿近さんの表情はどこか優しげで、言い返そうとしていた私の唇は開く事さえ許してくれなかった。 ----- ななさまからのリクエストでした! 台詞設定でしたが、生かしきれていない気が否めません…私の力不足です(><) 部分的に変えてみましたが、お気に召して頂けたら嬉しいです! では、リクエストありがとうございました! 2013/03/04 加筆 |