ダァン!と響く音に周りの目がちらちらと此方を見ているのがわかる。カウンターへ突っ伏すように顔を伏せる女の頭をスパーンと叩けばそれはそれはいい音がした。頭カラだなこいつ。 「…ちょっと阿近なにすんの」 「お前がうるせえからだろーが」 「……」 のそ、と起き上がった名前を尻目に酒を呷っていれば、途端に感じる肩の重み。ああまたかともう何度目にもなるこの行動に呆れにも似た溜め息が漏れた。 「またフラれたのか」 「…違う、私がフったの」 「へえ?珍しいな」 ここ数十年来の付き合いである名前は男運が皆無に等しい。モテる方だとは思うが結局捨てられて終わりなものが多く、フラれてはこうやって酒に付き合わされている。俺の身にもなって欲しいが。 「だってすんごい束縛してくるんだよ?誰とどこ行ったとか何してたとか何で電話してきてくんないのとか。…お前は女か!」 「…まさかお前を束縛したい物好きな男が居るとはな」 「うっさいばか」 ぺしん、と力なく頭を叩かれる。ぐりぐりと頭を擦り付けられて地味に痛い。あーだのうーだの唸る名前にハア、と大きく溜め息を吐いて頭をぽんぽんと叩いてやった。 「別れて正解だったんじゃねえのか?我慢してまで一緒に居る必要ねーだろ」 「…ん、」 「…まあ、何だ。俺は別にお前とこうやって呑みに行くのは嫌いじゃねえ…からな」 …自分で言ってて恥ずかしくなってきやがった。 呷るように酒を流し込めばピリリとした味が喉を通る。ふ、と息を吐く俺に肩に乗る女はへらへらと笑っていた。 「阿近つんでれー」 「…黙ってろ」 ふい、とそっぽを向く俺に嬉しいのか何なのかにこにこと笑みを絶やさない名前は巻き付くように腕に絡んできた。 「やっぱり阿近大好きー」 「…へーへー。つかお前酔ってんじゃねえのか?」 「えー酔ってないしー……あ、ヨダレ付いた」 「……!お前、」 …前言撤回、かもしれねえ。 へらへら笑う名前の頭をさっき叩いた倍の力で殴って俺はまた酒を呷ってやった。痛いと叫ぶ馬鹿を放置して鼻で笑ってやったのは記憶に新しい。 勿論その後も懲りずに泣き付いて来た名前に押し負け呑みに付き合わされるのはわかりきっていた事だが。 ----- ことりさまからのリクエストでした!友情夢というので頑張ってみましたが、お気に召して頂けたら嬉しいです。 では、リクエストありがとうございました! 2013/03/04 加筆 |