何故、ともし問われる事があるとしたら、私はきっとわからないと答えるだろう。頬に手を当て首を捻り、自問自答してはその答えに辿り着く。無限とも言っていい果ての無い輪のように、導きだしたそれは私を巡っていくのだ。 「…メ、フィスト」 ギシリと鳴る広々としたベッドの真ん中で、怯えたように瞳に私を映す名前。恐怖と不安、戸惑いを孕んだ彼女の表情に背筋がゾクゾクと震える。 「どうかしましたか?名前」 心の内で燻る黒いナニカを押さえ込んで、浮かべたくもない笑みを浮かべながら名前の唇を指先でなぞる。ひくり、引き攣った身体にくつりと口角が上がった。 「なん、でこんな…」 「…何で?」 その言葉に弄んでいた指先がぴくりと止まった。まるで破られた袋のように、くつくつと煮え滾る醜い感情が溢れ出た。 「メフィ……ん、ぅっ!?」 言葉を発する唇を噛み付くように塞いで舌を捩じ込む。途端にびくん!と反応した身体に私は目を細めて笑った。 「ん、…っぁん、んぅ…!」 ふるふると身体を震わせて唇の端から唾液を滴らせる名前。今まさに、彼女を征服しているのは紛れもない私だ。それを考えると、さっきまで胸の奥で燻っていた筈の黒い物体はするりと剥がれ落ちていく。 「…は、」 浅く吐いた息が熱い。目の前の彼女は荒々しく肩で息をしている。どうして、とその瞳が問うているように思えて実に腹立たしい。 …ああ、何故お前はこれ程までに私を掻き乱す。 「や、メフィスト…っ」 つう、と頬を伝う唾液を厭らしく舐めてそのまま首筋へと舌を這わす。噛み付くように跡を残せば、ふるりと名前が震えた。 「メフィスト、ど、したの…?」 「………」 心配そうに私の頬へと小さな手を添えて、首を傾げる名前。今私は一体どんな表情で彼女を見ているのだろうか。ああ、私らしくもない。 「…今日、話していたでしょう」 「はな、し?」 「言った筈です。お前は私のモノだと。笑顔を見せるのも、言葉を交わすのも、私だけでいいと」 …醜い嫉妬だ。彼女には彼女の世界があり、私には私の世界がある。…ただの気まぐれで関わっただけの人間に、ここまで依存してしまうとは。私はとうとうイカれてしまったのだろうか。 今すぐにでも、彼女を鎖で繋ぎ止めてしまいたい。なんて。 「…愛しているんです」 だからこそ、お前には私以外をその目に映して欲しくなどない。 「こんな私を、貴女は嫌いになりますか?」 誰かと笑い合うお前を見る度に、醜い感情が胸を占める。誰かがお前に近づく度に、私はまたこの手を血で染めていく。 狂気とも呼べるそれを止められる術など、私は知らないのだ。 「…名前」 だから、早く口を開いて私の名を呼んでくれ。 そうしなければ、この手が、口が、足が、お前を殺してしまうから。 「…名前、愛していますよ」 私はそう笑って彼女の柔らかな肌へと、口づけた。 狂ってる。鼓膜の奥で、誰かが私に囁いた。 ----- 竜崎.さまからのリクエストでした! 微裏があまり生かされていませんが、おきに召して頂ければ幸いです。 では、リクエストありがとうございました! 2013/03/04 加筆 |