その手を取って、
誰も居なくなった教室には、夕焼けの日差しが心地よく降り注いでいる。
少し暑くも感じる身体にふぅ、と息を吐きながら黒板消しをソッと桟に置いた。
あとは日誌に今日の反省を書かなければ、と思い私を待っているであろう人物の方へと振り返る。
『ごめん、一……護?』
疑問系になってしまったのは、私の仕事が終わるのを待っていた一護が机に顔を埋めて眠っていたから。
一瞬だけ時が止まった気がしたのは、顔を埋める彼が…とても綺麗だったから。
本当に一護はオレンジが似合うと思う。
サラサラの綺麗な髪に、夕焼けの光が射すそれは金色に輝いているみたいで、私は起こさないようにゆっくりと一護へ近付いた。
『一護…』
サラリと髪を撫でれば、漏らす息にドキッと胸が高鳴る。
『……好きだよ』
私の顔はきっと、この空に負けないぐらい赤いに違いない。
そう考えると少し恥ずかしくなって、ついそっぽを向いた。
その瞬間に、手首を優しい力で掴まれる。
『え…い、ち…』
振り返った時、目の前には見慣れた視界と椅子が机にぶつかる音が鼓膜に響いた。
「なまえ」
耳元で囁かれる寝起き独特の掠れた声。
「…なまえ」
『……ん?』
背中に回る太い腕が優しく私を抱き締める。
「…そういうのは俺が起きてる時に言えよ」
ふてくされた声色にクスリと笑えば、笑うなと言うようにきつく身体が締まる。
「…俺も」
『え…?……ん、』
ゆっくりと身体が離れたと思えば、間髪入れずに唇が重なって。
「…お前が好きなんだからよ」
『…!』
照れたようにそう言う一護に、私の顔は火が出るくらい熱くなった。
「顔真っ赤、だな」
『こ、これは…夕日のせいだもん!』
「へぇ?」
ちょっぴり意地悪く笑ってはにかむ一護に、今度は私からキスをしてやれば、ボッと頬を赤く染め上げる。
それに可愛いなと思いつつ小さく微笑みながら、私は帰ろうと手を差し出した。
名無しさまからのリクエストでした!
企画にご参加くださりありがとうございました!
2011/09/21
2012/03/31 加筆