貴方で染めて
「俺色に…染まってみるか?」
『ッキャー!染めてくださィイイイ!!』
テレビにかじりつくなまえを冷めた目で見る俺。
現世で今流行りのドラマ?ってやつをどうやら朽木から借りてきたらしい。床にはそれらしきパッケージが落ちている。
俺色にって…どんだけクセェ言葉連呼してんだ?現世ってのはこういうのが流行りなのか?わかんねえなァどうも。
『結婚してェエエエ!!』
「……」
…オイオイ。俺の前でそりゃねーだろ。
いつから吸い始めたのか、口に銜えていた煙草は短くなっている。それを側にあった灰皿に押しつけ、目の前に置いてあるリモコンでむず痒くなるテレビを消してやった。
『ぇええええ!?目の前が真っ暗!何で!ああっ、呂巳乙様がァアアア…!』
ろみお?……ああ、あのクセェ台詞吐いてた男か。
「なまえ」
『ううっ…何ですか阿近さ………』
振り返ったなまえの視線は俺の持つリモコンに注がれる。ぱちくりと瞬きをすると、きつく口を噤んでスタスタと俺の元へ近付いて来た。
『なんっで消しちゃうんですか!今いいとこだったのに!』
あーだこーだと文句を言いやがるなまえ。その度に胸の奥が苛々する。
チッ…と舌打ちして、未だに捲し立てるなまえの腰を引いて抱き寄せた。
『へぁ…!?』
驚いて声を上げるなまえの腕を強引に引く。椅子に座る俺の上へと身体を乗せて、無防備な唇に俺のそれを押し当ててやった。
『ふ…!?んん…っ』
バタバタと暴れる身体を押さえて首筋へと指を這わす。それにビクリと反応するなまえを薄目で見つつ、熱い口内に舌を捩じ込んだ。
『…!ん…っ、んぁ…!ふぅ、ん…』
ピチャピチャと生々しい水音が部屋に響く。ドンドンと俺の胸を叩くなまえの華奢な腕はいつの間にか俺の白衣を掴んでいて、唇の端からは溢れ出した唾液が頬を滴る。最後にそれを舐め取って、ちゅ…と触れるだけの唇を落とした。
『ふ……は、』
やっと解放されて、酸素を取り込むなまえの目にはうっすらと膜が張っている。
「そんなにヨかったか?」
『…っ、ばか!』
否定しないってことはそうなんだろ?
『なん、でこんなこと…』
「……わかんねえのか」
飽くまでもシラを切るなまえに眉を潜める。クイッと顎である場所を示せば、なまえはえ…と目を丸くした。
『まさか……妬いたんですか?』
ドラマに。
有り得ないとでも言うように目を大きく見開くなまえに、俺は無言で顔を背ける。
「……お前ェが結婚して欲しいだとか言うからだろーが…」
ポソリと呟いた言葉にどこからか『可愛い…』と聞こえた。
「可愛くねえ」
『ドラマに嫉妬してこんな事する人のどこが可愛くないんですか』
「……」
言い返す言葉が見つからない俺にクスクスと笑うなまえ
『…私はドラマのはいゆうさんよりも……阿近さんの方が大好きですよ?』
「………当たり前だ」
お前は俺だけ見てりゃいい。例えその気がなくても…俺以外の男に靡くんじゃねえよ。
『阿近さんはヤキモチ焼きですもんね』
まるで弱味を握ったように笑むコイツ。
「ほう…言うようになったじゃねえか」
ニヤリと口角を上げれば、即座に引き攣った顔になる。
「そういや……染めて欲しかったんだよな」
『え…?』
何が、と言葉を繋ぐ前に唇を塞いでやった。近くにあったソファの上へと移動して、トサッとなまえの身体を跨ぐ。
着崩した白衣をそこら辺に放り投げ、死覇装の会わせ目を緩める俺の下には欲に溺れた女の顔。
…こんなクセェ台詞、たった一回しか言ってやらねえからな。
「なァなまえ…」
…俺の色に、染まってみるか?
それを聞いたなまえは、小さくとも強く首を縦に振る。その姿を見届けて、内心含み笑いをしながら…無防備な首筋へと噛み付いた。
▼
「あのドラマ二度と見んなよ」
『えー…呂巳乙様好きなのにー…』
「……俺よりもか?」
『(か、可愛すぎる…!)そんな訳…!ない、です…』
「…そうか。ならもうあんな事言うなよ」
『あんな事?』
「……結婚して欲しいだとか」
『(……あれテンションが上がってただけなんだけどな…)…阿近さんて意外と嫉妬深いですよね』
「……なまえ」
『はい?』
「次はどこを攻めて欲しい」
『え…ちょ、阿近さ……ひゃあっ』
…阿近さんを弄りすぎたらダメ。それを今身を以て実感した瞬間だった。
心さまからのリクエストでした!
企画にご参加くださりありがとうございました!
2011/06/19
2012/03/31 加筆
※会話文only
□これが俺の愛情表現
ー傷心な彼女の弱味に付け込むー編
『あこんさぁーん…』
「何だ、フラれたのか」
『…何でわかるんですか』
「お前の事なら大体予想は出来る」
『…なんか複雑なんですけど』
「まァ気にすんな。…で?どうした」
『聞いてくださいよ!!』
「わーったわーった。聞く聞く」
『…私があんなに尽くしたのにあのバカ男…「なんか疲れた」とかほざいたんですよ!?』
「(ほざ…)あー…ま、いいじゃねえか。別れられてよ」
『いや、よくないですけど。でも…落ち込むってことは好きだったんですかねー…』
「…んな事ァ知らねぇよ。さっさと忘れちまえ」
『阿近さんひどい!冷たい!』
「当たり前だろーが。さっさと忘れて早く俺のモンになれ」
『…………はいい?』
「俺ァお前の弱味に付け込みにきたんだよ」
『いや…冗談は頭に付いてる角だけにしてくださいよ』
「……」
『……』
「……これ(角)冗談じゃねぇから」
キリリクとして心さまに(勝手に)捧げます(笑)