一周年企画 | ナノ
Dreams is True


夢には、深く考えている事や気になっている事、知りたい人物や見てみたい風景のように、自分の欲求が正直に出るものらしい。ちょっと前に胡散臭い雑誌でそう読んだ事がある。
これが夢だと判断出来たら自由に操れるとか言うし、自分の命に関わる事や危険な夢ならびっくりして身体を震わせて起きるとか。なんか局長が夢について語ってたような…
…うん、でもさ。
私確か昨日って普通に仮眠室で寝てたよね?何日も徹夜で死にそうな私を見越して寝てこいって阿近さん言ったよね?

……じゃあ何で…



『……』

「なまえ?」



私はその張本人に押し倒されてるの。



『…あの』

「ん?」

『これ夢ですよね?て言うか夢だ』



あり得ないあり得ない。現実じゃあ私を貶す事に快感を覚える阿近さんが私を押し倒すなんて。絶対夢だ。



「お前な…人がせっかく勇気出して告白してるっつーのに」

『…へ?告白…?』



首を傾げると目の前阿近さんは顔を背けながらコクリと頷く。……現実の阿近さんより可愛いんですけど。



「…お前も俺が好きだとか言ったんだろうが」



つん、と拗ねたように言い捨てる。

…って、ぇえっ!?



『い、い、いつ私がそんな…!』

「さっき」

『はぃいい?』



いや、さっきって…
さっきの記憶とかないんだけど!



「…焦らすなよ」

『え…』



ちょっと切なそうな目をした阿近さんが私を見下ろす。
じ、焦らすって…



「こっちはずっと我慢してたっつーのに…」

『が、まん…?』

「…ああ」



俺は、



「ずっとお前が好きだった」



だから自分を抑えんのに我慢してたんだよ。と、呟く阿近さんの頬はほんのり赤みが差してて。



『…!』



それはもう、私のツボにドハマり。



『……わ、私、も…阿近さんが、好きです…よ』



まさか現実より先に夢で言うとは思わなかった。



「…知ってる」



ふ、と少しだけ笑う阿近さんは嬉しそうで、きゅんと胸が高鳴る。
…現実の阿近さんもこのぐらい素直ならいいのに。



『……ん?』



ぼーっと考えてたら、身体に違和感が。



『え…ひゃっ、あ、阿近さん!?』



目の前に居た筈の阿近さんが私の首筋に顔を埋めていて、手が身体を這っていた。



「ん?」

『いや、ん?じゃなくて…!』



あ、ちょ…そこくすぐった…



「気持ちよくしてやるから」

『や…!』



いやじゃないけど心の準備が!

腰を引くけどしっかりと阿近さんに押さえ付けられていて逃げられない。

ちょ、夢ってすぐ覚めるもんじゃないの!?どんだけ深い眠りに就いてんの私!



『ひゃ…』



阿近さんの指が、太股を掠った。



『…!』



……何でだろ…気持ち悪い。まるで阿近さんじゃない他の誰かみたいで。

……こわ、い。



『…い、いやぁあああっ!』



ドン、と阿近さんの身体を思い切り押し返した。





『へ…?あ、れ…』



パチリと目を開けると、私を押し倒していた筈の阿近さんが居なくて。扉からバタバタと足音が聞こえたと思ったら、息を弾ませた阿近さんが入ってきた。



「なまえ!」

『え、あ、阿近さん?どうしたんですかそんなに急いで…』



はあはあと息を整えると、阿近さんはソファの端にゆっくりと座って呆れたように私を見た。



「お前が急に叫び声上げるからだろうが…」

『あ…』



私現実でも叫んでたんだ…
あははと引き攣った笑みを浮かべると、阿近さんは徐に私の頬へと手を滑らせてくる。



『…え』

「…大丈夫か?熱…はねえな」



阿近さんは自分の額に手を当てながらそう呟いて優しく微笑んだ。
……なんか、優しくない?



『え…これ、夢?』

「あ?何言ってんだお前」



まだ寝惚けてんのか、とでも言いたげな阿近さん。



『だって、阿近さんがこんなに優しい筈ないもん!それにさっきだって私を急に押し倒していろんな事するし…それに、私の事す、好きって…』

「……」



忘れたとは言わせませんよ!と睨み付けたら、阿近さんの顔がニヤッて…笑ってた。



「ほう…そうまで言うなら、期待に添えてやらねえとな」

『へ?』



何が、と言う声は私に覆い被さる阿近さんに遮られる。



『な、なにす…は、はにゃしてくらはい!』



ホントに何がしたいの!何で急にほっぺたつねって…



「痛いか?なまえ」

『いらいれす!いらいれす!』

「へェ?おかしいなァ…夢にも感覚があんのか」

『……………あ』



……ん?え、ちょっと待ってまさか…



『夢じゃ、ない?』

「おう。ちなみに、俺も本物な」

『……』



…ちょっと待ってよ。なに、じゃあ私…一人で突っ走ってたってこと?



「…さて、と。その夢の続きとやらでもするか」

『いやいやいや待ってくださいよ阿近さ…』

「待たねえよ」



すっかり男の顔になった阿近さんに、私にはなす術なんかなかった。







『…阿近さんのばか』

「まァそう言うなよ。…言っとくが、俺お前の事好きだからな」

『…え?』

「お前も俺の事好きだろ」

『……』

「なまえ?」

『……嫌いじゃ、ない、です』

「…素直じゃねえなァ」

『……うるさいですよ』

「ま、んなとこも好きだけどな」

『…!』



ちなみに、阿近さんはある薬を使ってなまえの夢を操作したらしい。

実は確信犯だったとか。







ななさまからのリクエストでした!
企画にご参加くださりありがとうございました!



2011/07/02
2012/03/31 加筆

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