竜の誓い番外編
※尚、この長編は現在撤去されています。ご了承ください。
奥州にて。
やられた…あんの変態独眼伊達男…
汗を掻いた為湯浴みをしようと奥州名物ばかでかい露天風呂へ足を踏み入れたのがそもそもの間違いだった……
多分、俺が一番油断するのは湯浴みの時。入るまでは気配は感じなかったから、多分柄にもなくはしゃいでた時だな…
『まさか…着物をすり替えられるなんて…』
一生の不覚だ……どうするか。
俺の目の前にあるのは…花街の女が着てんじゃね?って程豪勢な着物。
花魁rankだよ、本当。全身真っ赤で金の刺繍が入ってる。ところどころに真っ白な花が散らしてあって……うん、無理だな。
キョロキョロと辺りを見渡すが、あるのは手に持っている手拭いだけ。
お情けなのか、着物の隣にもう一枚手拭いが置いてあった。
『………殺るか』
とりあえず最初に小十郎に報告して、二人で政宗を挟み撃ちだろ?それから−−
約数分間、政宗抹殺計画を練り続け…
『…くしゅっ』
というくしゃみでやっと考えから脱出したのだった。
『…くそっ、俺に…これを着ろって言うのか?』
無理だ無理だ無理だ無理だ。これを着たら俺の何か大切なものを失ってしまいそうだ…!でもこのままだと確実に風邪を引く。
そうしたらもっと政宗の思うつぼだろう。
『俺は花魁、俺は花魁……』←何か違う
まるで呪文のようにブツブツと呟きながら着物の袖に腕を通したのだった。
▼
「……はぁ」
まったく…政宗様も独占欲が強い。誰の影響なのか…
確かに輝宗様もぷ、ぷれいぼーいだったが!!
小十郎は主の独占欲の強さに悩んでいた。
なまえと話すだけで半殺し。なまえとお茶するだけで半殺し。半殺し半殺し全殺し……はっきり言って身が保たない。
「それに気付かねェなまえもどうかしてるんだがな…」
ありゃあ鈍感じゃねェ。単に気付いてないだけかわからねェが。ったく、他の事には鋭い癖に自分の事となると途端に鈍くなりやがる。いや、そんな所もかわ…ゴホンッ。ダメだダメだ色恋なんてモンは。俺には必要ねェ、俺にはあのお方が居れば…って衆道みてェだな…
と、何故かそっちに走る小十郎であった。
▼
所変わって政宗の部屋…ではなくなまえの部屋。
「Ah〜…遅ェな」
政宗はなまえの部屋に居た。
あいつはprideが高ェからな…多分誰かに頼る事ァねェ。嫌でも着て部屋に戻って来る筈だ。という考えでなまえの部屋へ先回りしていたのだ。
(やっとなまえの女姿が拝めるぜ…)
張り切り過ぎて城下の特注を買っちまったが…
「ありゃ花魁だな…」
ククッと喉を鳴らして嫌な笑いを漏らす政宗。いつから筆頭は変態独眼伊達男になったのか…
「…にしても遅ェ」
変態独眼伊達お…政宗は待ちかねて露天風呂へと足を進ませたのである。
▼
『…死にたい』
初めてだ…こんな恥で死にたいと思うなんて。
『似合わないにも程があるだろ…』
この姿を見る為にあったのか、等身大の鏡を前に俺は呟く。
『この姿で…出て行けって言うのか?』
屈辱だ…ただの辱めじゃないか。
いや…でも此処でぐずっていればみんなが湯浴みに来てしまう。…それだけは避けたい。
『はぁ…行くか…』
着物の裾をたくし上げ、俺は脱衣場から飛び出した
ダッダッダッダ…
『くそっ、無駄に長いぞこの廊下!』
ああ、ムカつく…
だが誰もいないのは運がいい。
『…ああもう!』
俺は走る足を速くして、廊下の曲がり角を曲がった。…のと同時に強い衝撃。
ドンッ
「……っ」
『…うぁっ』
俺は吹っ飛ばされた。慣れない長い裾で受け身が取れない。
俺はそのまま縁側に−−
『…っ、あれ…?』
いつまで経っても衝撃が来ない。
「…っと、すまねェな…大丈夫か?」
聞き覚えのある声と、お腹に太い腕が。ギリギリの所で俺は抱えられていた。
『…あ、ありがとう…小十郎』
「…!お前…なまえか?ったく、廊下は走るなと……」
………………
小十郎の目が、これでもかという程見開かれた。
…あ、そう言えば…俺今花魁だったんだ…←?
は、恥ずかしい…!!俺は熱い顔を両手で覆った。
………………
俺の前に居るこいつは本当になまえなのだろうか。
真っ赤な着物に散らされる白い花は色香を醸し出し、金の刺繍は豪勢なものと裏腹に…色香を引き立てている。
(………………政宗様、ないすです)
一瞬で政宗の仕業とわかった小十郎は、顔がにやけないよう筋肉に力を入れながらそう思った。
なまえの美的感覚がおかしいのか、小十郎の目には花街の花魁だったとしても納得…いやそれ以上に映っている。
綺麗…綺麗過ぎる。
落ちない男は居ないと確信する小十郎である。…と、思考が外れたので戻してみた。が、今小十郎は縁側に落ちそうになったなまえを抱えている。
イコール…
はい、抱き締めています。
(オイオイオイオイ…マジかよ)
さぁどうしましょう。なまえは恥ずかしさのあまり気付いていないが、ここからは理性との戦いだ。
(いや…ダメだ。落ち着け俺、踏ん張れ俺!)
次第に息が荒くなる小十郎。最早竜の右目の見る影もない、ただの変態だ。
流石のなまえも小十郎の変貌振りには気が付く。
『こ、小十郎…?』
恐る恐る顔を上へと上げる。が、まぁ…自然と上目遣いになります。
顔は真っ赤で湯浴み上がりなのか身体は火照っている。
気を付けましょう、男は壊れます。
上目遣いは伊達じゃない!
ぷちっ
「……」
小十郎の理性の緒がキレた音がした。
『え、小十郎?ちょっ…』
なまえの身体に回る腕の力を強め、顔を近付ける小十郎。
唇がくっ付くまであと数センチ−−
「………Hey.小十郎」
竜が降臨した。
小十郎の身体は硬直。
冷や汗ダラダラ死亡ふらぐがバンバン。
命の危険を察知、しかし逃げられないのが小十郎。
だが、まだ右目は腐っていなかった。
ものの3秒で日ノ本一美しい土下座を披露。
「申し訳ありません政宗様ぁああああああ!!」
「Oh…」
つい面食らう政宗。
何度も何度も「申し訳ありません」の繰り返し…オンパレードだ。
怒る気も軽く失せてしまった政宗は、しょうがねェと呟いた。
「顔を上げな、小十郎。もういいぜ」
「ま、政宗様…!」
助かった、と思ったのは言うまでもない。
ゆっくりと立ち上がりもう一度頭を下げようとした時だ、政宗がある一点を見つめていた。自然と小十郎の視線は其処へ行く。小十郎は命の危険を再察知したのだ。
政宗が見つめていたのはなまえで、なまえは着物の着方を知らない。
小十郎は気付いていなかったが、なまえは最初から着物を着崩していた。
更に小十郎との一件でもっと着崩しを起こし、胸元まで露わになっていたのだ。
なまえ、着崩す→小十郎の所為→政宗キレる→死ぬ。
死の方程式の完成あんど、政宗の怒り…点火。
「小十郎…」
「は、はい…」
「……死に腐れやぁああああああ!!」
「ま、政宗様!お待ち−−」
ぎゃぁあああああ!!
小十郎は政宗に地の果てまで追い掛けられたのだった。
ちなみになまえは双竜が追い掛け合っている間にいそいそと着物を着替えたのであった。
それを知った後に、政宗が怒りのやり場を成実にぶつけたのはその二刻後だったとか…
黒椿さまからのリクエストでした!
竜シリーズ、皐月ちゃん&伊達主従ギャグ…こんな感じでよろしかったでしょうか?
最早文才の欠片もないですごめんなさい…orz
キャラ崩壊もやばかったですね…
こんなものでよければいつでも書き直しますので!
では、リクエストありがとうございました!
2012/03/23 加筆