『阿近さーん、もし私が局長に就任!ってなったらどうします?』
「終わるな、技局が」
『どういう意味ですかそれ』
ソファに座って足を組みながら煙草をふかす阿近さんが無表情で言う。…酷い、たとえばの話なのに。
「たとえで言うな。お前のたとえ話はシャレにならねえ」
『本当に酷いですよね』
たとえなんだからいいじゃない。
『じゃあもしも私が総隊長になった「無理」だからたとえ「阿呆」……』
「お前今すぐ山本総隊長に謝って来い。土下座で」
や、冗談だから。たとえ話だからね阿近さん。マジな目で言わないでください怖いから。
「なまえ」
『はい?』
ふー…と口から煙草を離して煙を吐き出す。そして阿近さんは横目で私を見た。
「……俺、明日から局長に昇進する」
『ま、マジですか!?』
え、え、え。じゃあ局長は!?
目を見開いて騒いでいると、くつくつと笑い声が聞こえて。阿近さんがニヒルな笑みを浮かべながら私を見ていた。
「嘘だ」
『へ?』
「上手いだろ?俺の方がよ」
簡単に騙されたし驚いた、そう言って笑みが深くなった。
「お前のたとえ話がつまんねえから俺が捻ってやったんだ」
『つ、つまんないは余計です!』
確かに騙されたけど!驚いたけど!
だって普通信じるよ!真顔であんな事言われたら誰だって同じ反応しますから!
「…なァ、なまえ」
『今度は何ですか?』
じと、と横目で睨めば阿近さんは持っていた煙草を押し潰して私の真ん前で立ち止まった。
「たとえばの話だがな」
『たとえば…』
何が来るのかと身構えていれば、阿近さんは徐に私の顎へ手を掛けて視線を合わせて。
「俺がお前を好きだって言ったらどうする」
と、低い声が私の鼓膜を支配した。……ぇえっ!
いやいやいや嘘でしょ。どうせまた冗談だって…
そう思って笑い飛ばそうとしたけど、そうは行かなくて。阿近さんのまっすぐな瞳が、冗談じゃないって言ってたから。
『…わ、たしも、たとえばの話ですけど、』
「…ああ」
『……私も好きで、両想いだったら…どうしますか?』
そう言い切った瞬間にボン、と顔から煙が出るぐらい熱くなった。
「…ククッ、そうだな…」
それに阿近さんは少し笑って。
「こうしちまうかもな」
グイッと、片腕に抱き締められたのと同時に唇に阿近さんのそれが合わさって。
目と鼻の先に居る阿近さんの顔がすごく綺麗だなー…なんて思ってたらチュッというリップ音の後に少しだけ阿近さんの顔が離れて、
「たとえば、もう一回したいって言ったらどうする?」
って、すごいざまあみろみたいな顔で言われた。
『う……ひ、酷いですよ阿近さん!』
「お前より上手く使ってるだろ?」
それは否定出来ないけど…
「で、どうする?」
と、腰に回す手を強くして、私の頬に手を這わせる。
うー…格好いい。負けるのはすごく悔しいけど。
『…もいっかい、して?』
「……上等」
そう言った時の阿近さんの顔がホントに嬉しそうだったから、いいや。
▼
『あ、阿近さん』
「ん?」
『たとえばの話ですけどー…阿近さんの実験用具壊しちゃったらどうしますか?』
「……壊したのか」
『…………ごめんなさい』
「仕置きだな」
『え……んっ、ちょ、あこさ……ぁっ』
ニヤリと笑んだ阿近さんは私の唇に荒々しくかぶりついたのだった。
湊さまへ捧げます!
阿近さんで甘めに攻めさせて頂きました!
こんなもので良かったらお持ち帰りくださいね^^
では、これからもよろしくお願い致します!
2012/03/27 加筆