捧げ物 | ナノ



「なまえ、お前俺の事好きだろ」



人員不足な技術開発局へ移隊してから早一年。額に角を生やした鬼にそう言われた。



『…………は?何言ってんですか阿近さん』

「やっぱりな…図星だろ。いつからだ?いつから好きだった。ん?」

『好きじゃないし。頭大丈夫ですか?』

「何だ、照れるな」

『照れてもないですから。何か変なもんでも食べたんですか?よし、私が解毒剤を作ってあげますよ』

「変なモンか…俺としちゃなまえが食いてえな」

『誰か助けて』



何この人。解剖のし過ぎで頭までイカレちゃったの?何普通に煙草ふかしながらそーかそーかって納得してんの?



「何だ、そんな熱い視線送らなくても」

『送ってないですから。強いて言うなら軽蔑の目です』

「冷てーな、なまえちゃんは」



あ、やっと会話成り立った。誰かに洗脳されてたのかな。



「ンな訳ねぇだろ」

『ですよね』



うん、多分口に出てたんだろう。阿近さんに読心術は出来ない筈。



「ブツブツ言ってんな」

『…えへ』



…やっぱり。



「で?」



と、煙草を揉み消しながら横目でチラリと私を見る阿近さん。



『…で?』

「で、じゃねえ。さっきの返事。一応告白してんだけど」



あ、あれが告白!?明らかに俺様発言してたよね!俺は別に好きじゃねぇんだけど、お前はそうだろ?みたいな!



『……質の悪い冗談ですね』

「お前な…俺の告白を冗談で片付けるな」



はぁ、とわかるように肩を落として、



「何の為にあの副隊長からお前を奪ったと思ってんだ」



と、バツの悪そうに頭を掻いた。



『…え、私って移隊じゃなかったんですか?技局に人手が足りないからって…』

「…それ嘘」

『へっ!?』



な…う、嘘!?
じゃあ何の為にこんな気持ち悪…じゃない、気味の悪…これも違う、人気のない技局に…



「…一目惚れ」

『え?』

「お前に一目惚れしたから」



鋭い瞳が、私を捕らえた。



…一目惚れ?



『……誰が』

「俺が」

『誰に』

「お前に」

『………ぇえっ!?』



あ、阿近さんが私に一目惚れ!?あの技局の鬼と恐れられる阿近さんが!私に!



『…阿近さん目大丈夫ですか?』

「ああ。視力はいい方だ」

『……本当に?』

「…何なら間近で見てみるか?」



ニヤリと口角が笑んで。一瞬で私の目の前に阿近さんの顔が。
私の顎に阿近さんのひんやりとした手が添えられて、クイッと上に向けられた。真上から覗くように、阿近さんの顔が目と鼻の先にあって。



「…可愛い顔が目の前にあるんだけど?」



と、息が掛かった。



『あっ、阿近さん…!』

「…ん?」

『ちち、近いです…』

「…ああ」



そうだな、と離れて行く顔が少し残念に思えて。視線を下に落とした瞬間、阿近さんに抱き締められた。



『ほぇっ!?』



びっくりして叫ぶと耳元から押し殺した笑い声が聞こえる。



「やっぱ可愛いわ、お前」

『……!』



真横に見える初めて見た阿近さんの笑顔に、きゅんて。心臓が、高鳴った。



「……大変だったんだぞ」

『な、何が、ですか?』



笑い声が止んだと思ったら、急に真剣な声が聞こえて。抱き締められたまま、私は耳を傾ける。



「檜佐木からお前を引っこ抜くのに、半年も掛かった」

『そ、そんなに…』

「結局は脅して返事を貰ったんだがな」



脅してって怖いよ阿近さん。



「お前に一目惚れして半年、そんでお前を此処に無理やり入れて俺の側へ置いて一年……長ぇよな」



一年と半年も我慢したんだぜ?と、どこか誇らしげに笑う阿近さんにまた心臓が、きゅんて。



「…ずっと、お前に触れたかった」

『あこ、ん、さん…』

「一年と半年も待ったんだ。そろそろ潮時だろ?」



そう言って、今まで密着していた身体が離れた。



「…真っ赤、だな」



そう言いながら私の頬に手を這わせる阿近さん。…あーあ、バレちゃった。隠し通せるなんて思ってないけど…



『う、煩いですよ』



本当は…抱き締められた時から私の身体は熱いの。でも、そんな事言ってあげない。だから、



「覚悟しとけ。絶対ェ俺のモンにしてやるから」



そうやってにんまりと笑う阿近さんに、



『……楽しみにしてます』



私は精一杯の強がりを言ったのだった。







「なァ…本当はお前、俺に惚れただろ」

『なっ!う、自惚れないでください!』

「…へぇ?抱き締めてた時心臓の音煩かったけど。身体離したら物欲しそうな顔してたし」

『し、してないです!』

「ふーん。ま、そういう事にしといてやるよ」



ニヤリと笑う阿近さんに、私は一生勝てないと悟るのだった。







ユナさまへ捧げます!

ベタボレな阿近さんどうだったでしょうか…
あえて恋人同士にはしなかったのですが…汗
こんなもので良かったらぜひお持ち帰りください^^
では、改めてよろしくお願い致します!



2012/03/27 加筆



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