捧げ物 | ナノ



私の名前はなまえ。
これでも十二番隊の席官です。只今技局のお茶目な角を生やした阿近さんに絶賛片想い中なのだ!



「…なのだじゃねぇ。さっさと出てけ変態ストーカー女」

『やだ、阿近さんたら。そんなに褒めないでくださいよー、なまえ照れちゃう』

「頼む、死んでくれ」



何やら変な匂いがする薬品を私に嗅がせようとしてきた。



『もう、そんな事しなくたって…抱き締めていいですよ?』



ん、と身体を擦り寄せたら肩をきゅっと掴まれた。



『…!あ、阿近さ……ふぎゃっ』



阿近さんの顔を見上げたら肩にピンポイントな関節技を決められた。



『いいい痛い痛い痛い!阿近さんの愛が痛い!』

「言っとくが、てめぇに痛みは与えてるが愛はこれっぽっちもやってねえ」

『またまたぁだだだだ!!』



抜ける!腕抜けちゃうよ阿近さん!



「………何してんすか」



聞き慣れた声が聞こえたと思ったら、急に阿近さんの身体が離れた。
…もうちょっと阿近さんの匂い堪能したかったのに。



「……なんか此処に変態が居るんだけど」

『変態は変態でも阿近さん専門の変態だから』

「聞いてねえ」



にんまりと笑みを浮かべて見上げれば、やっぱりこの人。



『もう、修兵のばか。私と阿近さんとのランデブーを邪魔しないでよこの卑猥刺青野郎』

「…今幻聴が聞こえた気がすんだけど」

「奇遇だな檜佐木、俺もだ」



引き攣った笑いを浮かべながら修兵が私の阿近さんと何やら話してる。



「お前のじゃねぇから」

『照れなくてもいいですよ!』

「…なァ檜佐木。お前いつコイツの育て方間違えたんだ?」

「…知りませんよ。昔はこんなんじゃなかったんすけどね…」

「……まァ、いいけどよ」



コソコソと話してた阿近さんが徐に私の頭を撫でる。



『!…へ、阿近、さん?』



今までストー…げふん、追っ掛けてて一度も頭なんて撫でてくれた事なかったのに。



『…なんか、企んでますか?』

「別に?たまには飴もいいだろうと思ってよ」

『あめ…』



…なんか、調子くるう。
いつもは阿近さんの後ろつけてたり(ストーカー)阿近さんの実験室入ったり(部外者)阿近さんの家入ったり(不法侵入)阿近さんの私室覗いたり(変態)してる私が…



「…お前んな事してんのか」

『あとは阿近さんの白衣の匂いをかぎ分けたりしてます』

「……」

『あ、ちゃんと現世のふぁぶりーずで除菌してますよ?』



そういう事じゃねぇだろ…という呟きの後に、阿近さんは白衣のポケットから鍵を出して私の手のひらに乗せた。



『…?』

「俺の家の鍵。居たきゃ勝手に居ろ」



………え。



『い、いいんですか!?』

「ああ」

「ちょ、阿近さん!?こんな変態女家に入れたら何するかわかんないっすよ?」

『黙れムッツリスケベ!』

「ム…!」



よし、うるさいのは黙らせた。



『え、じゃあ今すぐ行ってきます』

「おう。あんま変なとこ触んなよ」

『は、はい!じゃ…じゃあ、何かしておいて欲しい事はありますか隊長!』



こんなに胸がドキドキするのは初めて阿近さんの部屋に入った時以来だ。



「……そうだな」



少しだけ宙を仰いで私の方を見ると、阿近さんの唇は綺麗な弧を描いた。



「とりあえず…飯作って布団敷いて、俺の帰り待ってりゃいーんじゃねぇの?」

『……』



…これって最高の殺し文句だと思うんだけど、どう思う?



▼檜佐木的視点



俺の幼なじみはストーカーだ。



『阿近さぁああん!!』



毎日のように(いや毎日)技局の鬼…阿近さんに付きまとっている。



『今日も大好きですよー!』

「…うるせぇ」



廊下に響くぐらいの声でそう言えばあっさりと流された。
落ち込むかと心配になったのは最初の頃だけ。慣れてるのかなまえはへらりと笑いながら阿近さんの背中に引っ付いてた。
……流石に真似できねぇわ。



「……重い。離れろ」

『レディに重いは失礼ですよ?』

「お前は変態だろうが」



なんて会話は聞き慣れた。
その言葉を無視して阿近さんの匂いを嗅いでいるなまえはマジで変態だ。
そんな変態に想いを寄せる俺はもっと変態かもしれない、



「…オイ檜佐木。呆けてねぇでこの変態離せ」



すると傍観していた俺に気付いた阿近さんが眉間に皺を寄せながらそう言った。



「そう言っても嬉しいんじゃないすか?」

「…アァ?」

「……ガンつけないでくださいよ。だってなまえ、彼女でしょ」

「……」



黙る阿近さんの背中でなまえはにこにこと笑ってる。
…確か、最近やっとくっついたんだよな。



「じゃ、俺はそういう事で。なまえー、あんま阿近さんにしつこくすんなよー」



手を振りながらくるりと方向転換。
阿近さんが何やら毒づいてた気がしたけど気にしない。

「……あー…」



…ったく、何なんだよ。
変態ストーカー女に失恋って結構傷つく。や、俺が勝手に傷ついたんだけどな。
あれか、やっぱ阿近さんに気付かせたのがダメだったのか。いやでも阿近さんも薄々気付いてたよなァ。
何だよ、俺キューピッドじゃん。ブレイクマイハートだけど。
でもあの阿近さんを落とせたんなら…いっそのこと変態ストーカー男檜佐木になっちゃうか?



…………



……やっぱやめとこ。



「…チッ、早く別れちまえばいいのによ」



少しぐらい毒づいたってバチは当たんねぇだろ。
負け犬の遠吠えだこのやろー。




「……やっぱケンカしちまえ」



…結局俺はここまできてもチキンだったって事だ。







アイちゃんへ捧げます!
変態ストーカーヒロインちゃん書いてて楽しかったです!(笑)
最終的に曖昧に終わってしまいましたが、檜佐木的視点ではくっついてる感じにしました!
修兵くんの心情を楽しんで頂けたらなぁと思います^^

では、これからもよろしくお願いします!



2011/07/07
2012/03/25 加筆



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