捧げ物 | ナノ



『阿近さーん』

「……」

『阿近さーん?』

「……」

『……』



え、何コレ無視?
私何かした?それとも新手の嫌がらせ?前の足引っ掛けて嘲笑うやつは飽きたの?
カチャカチャと部屋に響くのは何やら備品を片付ける音だけ。

うー…

ただちょっと檜佐木さんと話してただけなのに…義骸の事でほんの少し話が弾んじゃっただけなのにー…
なんかさり気なくボディタッチとかされたけど…
そこに居合わせた阿近さんはなんかめちゃくちゃ不機嫌だったけど!



『阿近さーん…』

「………ハァ」



溜め息吐かされちゃったよ!え、何、私が悪いの!?



「わかってるなら何で彼奴に近付いてんだ」

『へっ!?』



まさかの自問自答に阿近さんの不機嫌極まりない声が。



「口に出してんだよお前」



馬鹿か、と毒づかれた。



『うー…』



くそう…何だこの人は…



「お前の上司」

『すいませんでした』



これ以上墓穴を掘るのは止めようと素直に謝れば、楽しかったのになと振り返った阿近さんが笑っていた。



「で、檜佐木と何してた」

『え?檜佐木さんとですか?…普通に義骸についてですけど、』

「ナニ、された」

『な、ナニ?』



カタカナ表記ですよ阿近さん。



「どこ触られた」

『えっ』



と、気付いた時には目の前に阿近さんがいて。いつの間にか私の視界には広い胸。



『ほぇっ!?あ、あああ阿近さん!?』



…抱き締められていました。



「言っただろーが…彼奴にゃ気を付けろってよ。何勝手に触られてんだ」



馬鹿、とまた言われ…



「……お前は俺のだろ」

『……!!』



きゅん、って胸が高鳴った。
本当に……飴と鞭の使いようが上手い人だ。



『…阿近さん』

「ん?」

『大好きです』

「……ああ」

『大好き、です』

「知ってる」



フッて上から笑う声が聞こえて。
それだけで好きだなぁって思える私はきっと末期。



キュッと抱き付く腕に力を込めれば、頭に唇が降ってきた。



「なまえ、お前あんま俺から離れんな」

『はぁい』



檜佐木が危ねぇからな、って…
知ってますよ?阿近さんは絶対自分がしたいからとは言わないの。
檜佐木さんを理由にして私を側に置こうとしてる事ぐらいお見通しなんだから。



「何笑ってんだ」

『えへへ、何でもないですよー』


「…ったく」



しょうがねぇな、そう言って私を抱き締める腕に力を込めた。







『阿近さん何してるんですかー?』

「…いや、檜佐木の義骸にちょっと…な」



はい完成、と言う阿近さんの顔は何かをやり遂げた後のように清々しかった。

……檜佐木さん、気を付けてね。




「…くしゅっ……風邪か?」







麻阿さまへ捧げます!
勝手ながら阿近さんで書かせていただきましたorz
返品及び書き直し等受け付けていますので!

では、これからもよろしくお願い致します!



2011/02/01
2012/03/25 加筆



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