捧げ物 | ナノ



此処は奥州。
筆頭である伊達政宗を主に持つ、住みよい場所。



『…っ、はい次!』



声の響く道場には一人の女と多数の男。ガキィッと竹刀の交わる音と吹っ飛ばされる男達の山。



『こんなものでどうするの!私達が政宗様を護らずして誰が政宗様を護る!』



凛とした眼差しで自分よりも体格の大きい男達を一喝するのは伊達の紅一点。




「う…っ、なまえさん…もう無理っすよ…」

『あんた達男でしょう!男が女に負けて悔しくないの!?』



ギロッと睨めば「ヒッ!」と怯える男共。…奥州伊達軍が聞いて呆れるわ。



『…はぁ、もういいわ。じゃあ「随分と荒れてるじゃねェか、なまえ。俺とやろうぜ、Ah!?」…っ、政宗様っ!』



背後から竹刀を振り翳す我が主。ギリギリの所で防げた…



『…女子の背後からとは当主あるまじき行為ですね』

「Ah?敵の背後を突くのは当たり前だろ?」

『…敵、ですか』



言ってくれる、この餓鬼。



「…口に出てるぜ?相変わらず腹黒だな」

『それは、ありがとうございま…すっ!』



油断大敵!というように足払いしてやったら案の定倒れた我が主。



「てめェ!今のは卑怯だろうが!」

『何を仰いますか、政宗様。これを卑怯と言うのでしたら…先程のは愚行ですよ』

「Ah…お前は余程俺に斬られたいらしいな」

『ご冗談を。あなた様に斬られる程落ちぶれてはいませんよ』



目には目を、歯には歯を。悪口には悪口を!
これが普段の伊達軍。そして、



「てめェなまえ!政宗様に何してやがる!」



毎回右目に止められる事も。



『しゃらーっぷ!今私はこの生意気な子供を調教してるの!』

「Ha!下手くそな発音だな。手本見せてやろうか?」

『あんたに言ってないから!』



右目を無視して口喧嘩勃発。小十郎の額には青筋が浮き出ていた、



「なまえ…どうやらてめェは俺に斬られてェらしいなァ…」

『は…?え、ちょっと小十郎?まっ、待って!』

「問答無用だ!政宗様…あなた様もですよ。こんな単純な挑発に乗ってどうするのですか!」

「What!?俺は関係ねェだろ!オイ、なまえ!てめ笑ってンじゃねェ!」



ゴゴゴ…と地響きを起こさせている小十郎を後目に二人は取っ組み合い。ブチ…ッとついに小十郎の血管が切れ、いつの間に抜刀したのであろう黒龍を振り翳していた。



「てめェらァアアアア!!」

『え、ちょ…っ、小十郎!?ごめんっ!謝るから…』

「Stop!小十郎、話せば」

「わかるかァアアアア!!」

『「ぎゃぁああああああ!!」』



二人は青き竜に地の果てまで追い掛けられたのだった。







『……ん、』



目をうっすら開けると、辺りは暗くて、何回か目を擦って頭を覚醒させると、私は布団の中に居た。
ズキリと痛む身体を立たせ、起き上がれば、



「…起きたか」



低くて心地良い声が、すぐ横で聞こえた。



『こ、じゅろ…』

「すまねェな。加減したつもりだが…身体は大丈夫か?」



何でそんな悲しそうな顔…あ、そっか。政宗様と一緒に追い掛けられたんだっけ。で、まぁいろいろと打ち身やらしちゃったのか。



『ん、大丈夫だよ。ありがとう』

「……ああ」



このホッとした瞬間の表情が好き。思わず抱き付いてしまった。



「…どうした」

『…なんか、恋しくなっちゃった』



小十郎の広い胸に顔を埋める。



「クッ、恋しくなった…か。あれだけ暴れてた女がよく言うな」

『…酷い言いようね。私の演技力を褒めて欲しい所よ』



…元々私はあんな性格じゃないんだから。



「…ああ。だが“生意気な子供”は言い過ぎだな。例えわざとでも、もう少し言葉を選べ」



強い口調だけど声色は優しくて。空いてる右手で私の頭を撫でる小十郎。



『…うん。政宗様には悪い事しちゃったなぁ…毎日だけど。これでも結構好きなんだけどあれかな、愛情の裏返し?』



クスッと笑うと私の頭を撫でる手が止まった。



『…こじゅ?』

「…気に食わねェな」

『え?…ちょっ、んっ!』



低い声でそう呟いたと思ったら、急に唇を奪われていつの間にか目の前には小十郎の顔と天井……押し倒された。



「お前は俺のモンだ。…そうだろう」



…あ、これって。



『妬いてるの?小十郎って可愛いのね。でも大丈夫よ、政宗様の好きは敬愛。小十郎は男として』



こんなの演技でも何でもないよ、ってにこりと笑えばまた唇を奪われた。



「…好きだ、なまえ」

『残念、私の方がもっと好きよ』



ニッと意地悪な笑みを浮かべれば、「じゃあ確かめてみるか?」って。首筋に顔を埋めて来るから、私は降参するしかない。だって、男になった小十郎には勝てないから。

こんな私を知ってるのは小十郎だけねって耳元で言ったら、当たり前だって。



「俺の前だけで見せるお前が本物だからな。今までも、これからも…俺以外に見せてやるつもりはねェさ」



勿論、政宗様にもな…なんてすごく優しそうに微笑むから、また好きって言っちゃったじゃない。
口では政宗様に勝てるけど、この人には全部に負けてしまうって改めて実感した。



「愛してる……なまえ」



…ほら、最高の殺し文句。



▼おまけ



「……」



小十郎がなまえを愛おしそうに見ながら部屋へ運んで行った。それがすげェ気になったから気配を頑張って殺して襖の前で聞き耳を立ててたんだ。そしたら何だ…なんか始まっちまったぞ。
なまえがおかしい、さっきから。演技?小十郎が好き?いやいや、あり得ねェだろ。嘘に決まってる…嘘に『…っあ、こじゅ…ろ…ぁっ』



………………



伊達政宗、元服から早数年。世界は俺の知らない事だらけだ。



とりあえず、



「小十郎…Go to hell!!」







ツバサさまへ捧げます。
小十郎の甘…になったでしょうか…汗
内容がよくわからなくて申し訳ないですorzorz

書き直しもお受け致しますので、こんなものでよろしければお持ち帰り下さい!

そして、これからもよろしくお願い致します!



2012/03/25 加筆



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