とこてくと阿近さんにちょっかいを出そうと研究室に乗り込もうとしたら、どうやら先客が居たらしく声が聞こえてきた。途端に上がりかけていたテンションが急降下していくのがわかる。マジ空気読め先客、と毒づいて帰ろうと足を進めたら甲高い声が聞こえたので私はすぐさま壁にへばりついた。
『…おーすごい』
どうやら先客とは女の人だったらしい。そして多分中ではいやーんあはーんな事をしているのだろう、喘ぎ声が聞こえてくる。
『……』
…や、覗いたりなんてしないからね。覗き見シナイ、大丈夫。…ちょっとそこのリンくん、なに私のかっこ見て悲鳴上げてんの剥くよ。
それから数十分後、颯爽と給湯室に現れた阿近さんにさっきあった事を聞いてみると、一瞬目を丸くしたあとめちゃくちゃにやにやしながら「妬いたのか?」と聞いてくるのがすごいかっこよかったのではい、と答えたら頭を撫でられた。嬉しい。
「さっきの女はそんなんじゃねえよ。ただ男ってのは定期的に抜かねえとやべえからな」
『抜く?』
「おう」
阿近さんはそう言ってコーヒーを飲み干すと「お前も欲求不満なら相手してやるよ」とプレイボーイ発言をして去っていった。早く欲求不満になりたいと思った。
でも阿近さんの「抜く」という言葉の意味がわからない。ので、とりあえず鵯州さんに聞いてみる事にする。
『鵯州さん鵯州さん』
「お、何だなまえじゃねえか。何か用か?」
『聞きたい事があるんですよー』
「珍しいな、言ってみろ」
『抜くって何ですか?』
「ブフゥッ!?」
『え、大丈夫ですか鵯州さん。それでですね、男の人って定期的に抜かなきゃだめらしいんですよ』
「ま、待てなまえ、お前なに…」
『で、抜くって何ですか?』
「やめてくれ…!」
盛大にコーヒーをぶちまけた鵯州さんは結局何も教えてくれなかった。あとで阿近さんに聞こうと思います。
阿近さんと「抜く」
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