お酒の力を借りるとはよく言うと思う。確かに素面じゃ本音を言う事はそうそう出来ない。ただお酒の席になると、無礼講だと言わんばかりに言葉が漏れる。
『あこんさん、は!わらしのこと嫌いなんれすかあ!?』
現在進行形で、私は阿近さんに絡んでいる。どうやら私の場合絡み酒だったらしい。阿近さんの晩酌に付き合って軽く呑んだらこうなってしまったオチだ。ちなみに意識はあるよ。酔ってるけどね!
「嫌いじゃねえってさっきから言ってんだろうが」
呆れ半分うざさ半分な顔をしている阿近さんは手に持ったお猪口をクイ、と呷る。
くっそ様になってやがる。
『じゃあ好きなんれすか!』
「……」
何故そこで黙るあこん!むかついたので私も酒を呷ってやった。溺れてやる、酒だけに。
「あんま呑み過ぎんなよ。後がめんどくせえ」
キィイイ!ばか!阿近さんのあんぽんたんめ!いやまあ確かに阿近さんはつんでれだけどさあ…ノリってもんを知って貰わなきゃ。え、私?阿近さんの事?好きに決まってんじゃん。
『くそー阿近さんなんれ好きなんらからな…』
「わかったわかった」
そう言って苦笑しながらポンポンと私の頭を撫でる阿近さんが好きです。もうらぶ。
本格的に酔いが回ってきたのか、阿近さんの手のリズムと同じように頭がふらふらと舟を漕ぐ。
「…眠ィのか?」
『ん…』
こすこすと目を擦ってまだまだいけるぜアピールをするも意味はなく。横になれという阿近さんの命令に素直に従ってソファへと横になる。
「頭、浮かせろ」
『……あい』
重たい頭を持ち上げて阿近さんのいいぞ、という声にトスッと頭を預けると、ソファではない硬さが。手で確認すると、上から「あんま触んな」という阿近さんの声が聞こえた。…これはもしや、巷で噂の膝枕だろうか。阿近さんのふと、もも…
『あこ、さ…』
落ちてくる瞼に力を入れて見上げると、少し照れた阿近さんの顔が映る。口を開こうとしたら、大きな手が私の目に触れた。
「……寝とけ」
ぶっきらぼうな物言いとは違って、優しい声色。少し惜しい気もするけど、今更起き上がる気力もなく、私は小さく頷いて目を閉じた。
「好きか嫌いか…か。…んなモン、好きに決まってんだろうが」
阿近さんがそんな事を言っていたなんて、私は知らない。
阿近さんと「お酒」
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