…なんという事だ。
「オイ、なまえ?」
目の前で呆れたように私の名前を呼ぶ阿近さん。…の顔に。
「なに阿呆面してんだ」
もう一度言おう。私に今にも殴りかかりそうな阿近さんの顔に、め、めめめめ、め、
『目がぁああああっ!!』
痛い痛い痛い痛い!今阿近さんなにしたの!ちょう目いてえ!
「やっと戻って来やがったか。ったく」
『ちょ、阿近さんひどい!見惚れてただけなのに!刺激臭目に近づけちゃだめだって局長に言われなかったんですか!』
「俺は餓鬼か」
スパンと叩き落とされた突っ込みに涙が出ます。いやもう出てるんだけどね。ああ染みる。
『そうじゃなくて…あ、見えてきた』
こすこすと白衣で目を擦ってやると、漸く視力が戻ってきたらしい。瞬きを数回して、もう一度阿近さんを見やる。
「…何だ」
『あ、ああ、阿近さんが眼鏡かけてる…!』
ちょっと誰よこんな究極の装備品持ってきた人…!今ならその人にスライディング土下座できる!ありがとう!ありがとう萌え!MO!E!
「うるせえまた刺激臭の刑にしてやろうか」
『すんませんでした』
結局阿近さんにスライディング土下座を噛ますのだが。
「こいつは試作品だ。試しに掛けてるんだよ」
『阿近さんが?』
「…鵯州が掛けたって気持ち悪ィだけだろうが」
言ってる事ひどいけど正論だから頷いとく。
…にしても、かっこいいです。
「…何だ、また凝視しやがって」
『だ、だって阿近さんのかっこよさに更に磨きが…』
周りに華が見えるんだもん。なによこれ。ちょうかっこいいんですけど。あ、その眼鏡上げる仕種頂きました。いち萌え頂きました。
「…ふーん?」
途端ににやにやし出した阿近さん。はい、余裕でに萌え頂きですね。
「お前、本当に俺の事好きだな」
くつくつと目を細めながら笑う阿近さんに、さっきまで虫の音だった心臓が爆発的に鳴り出した。
『すっ、すす、好きで悪いですか!』
「…いや?別にいいんじゃねえの?」
『……!』
ちょっとこの眼鏡阿近さん強いんですけどォオオ。いつもの余裕にいろいろ装備品プラスされてるんですけどォオオ!
「なんなら、眼鏡口で銜えてやろうか?」
そう厭らしく上目遣いで聞いてくる阿近さんに、私は『お願いします』と床に頭を擦り付けた。
阿近さんと「眼鏡」
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