わかってた。あなたが私を愛してない事くらい。
それでも私は、その偽りの愛に縋っていたかった。
大名の娘。それは無知で可哀想な生き物。ただの肩書きに、私は何度も命を狙われた事がある。
『……』
おしとやかに、自分の感情を抑え込んで笑顔を作るだけの人形。
私の目の前に居る忍だって、私をそう見ているに違いない。
「姫?どうかしましたか」
『…姫なんて呼ばないで。妻となる女に、姫は失礼よ』
「……申し訳ありません、名前様」
『……っ』
低く呼ばれた自分の名前に身体が熱くなる。それを悟られたくなくて、咄嗟に背を向けた。
『…ごめんなさい』
「何を、謝る事があるんです」
『だってあなたは…私の夫と、なるのですよ?』
…会ってたった数日の女の夫に、誰がなりたいと言うの。
忍…はたけカカシとの出会いは、私と父の護衛だった。命を狙われた父が、木ノ葉に依頼した事がきっかけ。
気に入った、と私の縁談に父ははたけカカシを指名した。
「オレは別に、構いませんから」
『……そう』
…わかってる。これはお願いなんかじゃなくて、命令だって事くらい。
大名に楯突く事なんて出来ない。彼はただの、言いなりに過ぎないのだ。
「…それに、オレは愛してますと言ったでしょう」
跪いて私の手に軽く口づける。
紳士的なその言動に、いやでも胸が跳ねた。
『……っ』
…それが私の心を抉っているとも知らずに。
「ずっと貴女の側に居ますよ」
偽りの言葉と偽りの口づけ。
仮面を被っている彼の本当の素顔なんて、私は知らない。
…だけど、
『…愛してる』
私があなたに恋をしていたなんて、あなたはきっと、気づいてないの。
恋をしました。
儚く脆い、偽りの恋を。
リハビリカカシ。
矛盾生じますが温かい目で見て貰えれば…!
2011/12/27