何故だ。何故これ程に…恋い焦がれる。
『私ね、好きな人ができたの』
キラキラと輝く笑顔を振り撒いて、名前は笑う。
ああ、親元から離れるというのはこんな気持ちなのか。
「…そうですか、それは良かったですねぇ。で、人間ですか?」
『失礼ね。ちゃんとした人間よ』
「ほう?」
口に含む紅茶の味など、既にわからない。
ただひとつ言えるのは、私は今とても…腹立たしいという事だ。
『意地悪言うメフィストなんか、嫌いになっちゃうんだから』
ふふっと悪戯っぽく笑う名前。
…その顔も、仕種も、その好きな人とやらのモノになってしまうのか?
『メフィスト?』
「……名前」
『ん?…え、な……んんっ!』
細い腕を引いて抱き締める。そのまま顎へ手を添えて、赤く熟れた唇にかじりついた。
『や…っ、メフィ……んう!』
「はっ……名前…」
いやいやと首を振る名前にぎゅうと胸が締め付けられる。…苦しい、苦しい。まるで心が酸素を求めているように。
「……愛して、いるんです」
何で、と紡ぐ小さな唇に私はそう言った。
…誰かのモノになる事など、許さない。
たとえ私のモノにならなくても、お前が隣に居るのなら。
「…想い人を忘れるくらい、私が愛でて差し上げましょう」
目の前で涙を流す彼女に、私はただ自嘲的な笑みを溢した。
痛む胸に、
己を偽って。
この題名を使いたかったのさ。後悔はしてない←
2012/01/28