何でこんな事に…
頭を悩ませる私を余所に、目の前で繰り広げられる口論。
「アマイモン…貴様覚悟は出来ているな?」
「それはこっちのセリフです。兄上こそボクの名前に手を出して、タダで済むと思ってるんですか」
『……』
口元をひくつかせるメフィストの目は笑っておらず、ギリギリと爪を噛むアマイモンは今にも地震を起こさせようとしている。
「…名前、説明して頂けますかな?」
『…え、いや、説明と言われましても…』
「……まさか、私という者が有りながら浮気していたんですか」
『う、うわ…!』
どうなんです、と顔を寄せて目を細くさせるメフィスト。
浮気なんかしてない!と半ば叫ぶ勢いで胸を押せば、はぁ…という溜め息が聞こえた。
「…まあお前が浮気を出来る程器用ではない事ぐらいわかっている…が」
『…?』
「アマイモン、ボクの名前とはどういう事だ」
ギロリ、瞳孔を広げまくったメフィストがアマイモンを睨みつける。…コワイ。
「ボクの名前はボクの名前です。…第一、浮気って何ですか。ボクは名前のコイビトなのに。…兄上の妄想も大概にして欲しいです」
「……貴様」
ゴゴゴ…と睨み合う二人に地鳴りがする。
…と言うか、話食い違ってないか?私、一応メフィストと恋人同士なのですけども。
「名前はボクにちゅうしてくれました」
「………名前?」
『ええええ…しっ、してないよっ!?』
そんな馬鹿な…!
ほんのりと頬を染めるアマイモンに私は冷や汗もの。
…いやいや、そんな事した覚えないよ。
「苦かったけど、名前の唇おいしかったです」
『……苦かった?』
…ん?苦かったってどういう事?
疑問符を浮かべる私に、メフィストは盛大に溜め息を吐いた。
「…名前、酒は飲むなとあれほど言った筈だが」
『お酒?………あ、』
そう言えば…この前、少しぐらいいいかなと思って飲んだんだっけ…
あはは、と渇いた笑みに鋭い視線が突き刺さる。
「お前は酔うと厄介だという事がわからないのですか。まったく…他の男に唇を許すなど、腸が煮えくり返る気分ですよ。あまつさえこの愚弟の言葉に気分を害されているというのに…」
『……』
…どうやら、私は酔った勢いでアマイモンにちゅうしてしまったらしい。
そしてさぞかし怒っているであろう、長々チクチクと私に言葉をぶつけるこの人。
「さて…私の言い付けを破った悪い子には、お仕置きをしてあげないと」
『…はい?』
「兄上ずるいですよ。ボクも名前にお仕置きしたいです」
や、ちょっと待って。お仕置きって、お仕置きってなに!
て言うかさりげなくアマイモンも参加表明!
「…そうだな。お前に関してはたっぷりと灸を据えてやりたい所だが…いいだろう。アマイモン、名前の身体を押さえろ」
「ワーイ!」
『えっ、ちょ…!』
ピヨーンとアマイモンが私の腕を掴んで側にあったベッドへと押し倒す。
…え、どゆこと?嫌な予感しかしないんだけど。
「さて、と。名前…今日はじっくりゆっくりねっちょり私たちが愛でて差し上げましょう」
『ね、ねっちょり!?』
腕を押さえつけるアマイモンに、ギシリと音を立てて近づいてくるメフィスト。
まさか、これって…と目を見張る私に、頬へ手を添えたメフィストが低く囁いた。
「…困ったお嬢さんだ。悪魔を二匹も虜にするなんて」
とろけるまで、貴女をしゃぶってあげましょう。
ニヤリと妖艶に笑むこの人たちに、私はただ芯が疼くのを感じた。
舐めて吸われて食べられて。
とりあえず、お酒は飲まない事にしました。
(わかっているんですか?私はこれでも嫉妬深いんです。まったく…あの愚弟と分け合う事などしたくないんですよ)
((思いっきり楽しんでたくせに))
(…何か?)
(イイエナンデモ)
(名前ーすごく気持ち良かったです。また三人でヤりましょう)
(…お前ちょっと黙ってて)
あれ…こんな筈じゃあ…
2012/04/02