好きだ。好きなんだ。
こんなにもお前を想ってるのに、なんでわからない。
…なんで、俺じゃない誰かを見てるんだ?
『り、ん』
怯えた目で俺を見つめる名前。
ああ、かわいいな。…でも、
「…なんでそんな目をするんだよ」
『、え…』
やっとこの手にお前を抱けるのに、
やっと…二人きりになれたのに。
「…俺を、見ろよ」
『…っ、や…!』
首を降って後退る名前の腕を掴んで抱き締める。
暴れる身体をきつく抱き寄せて骨が軋む程力を入れれば、名前の身体は簡単に収まった。
『やだよ…燐、なんで…』
みんなの所に、帰してよ…
じわりと服に感じた水気にぞくぞくと何かが背を駆ける。
「ダメに決まってんだろ?やっと俺のモノになったんだ。簡単に放したりしねぇよ」
そうだ。離す訳がない。
名前がいなくなって一週間、今じゃあいつらだって諦めてんだから。
…だからもう、
「お前は俺しか愛せないんだ」
そうだろ?
お前は俺以外を愛せない、愛しちゃいけない。
俺を見るしか、ないんだから。
『……っ、――…』
名前の口から小さく紡がれた名前は、俺のものではなかった。
「……っ、」
…こんなにも強く腕に抱いているのに、この醜い想いが彼女に届く事はない。
でも、たとえそうであっても、自分のモノだけにしたかった。
…そう考えてしまう俺はきっと、狂っている。
肩に頭を預けて涙を流す名前に、俺はただ笑った。
これが愛というのなら
それはきっと、狂気の沙汰。
狂った燐が書きたかったのです。
2012/01/06