「ボクは名前が嫌いです」
『……』
兄上が言っていた。
お前は名前さんに構いすぎだと。押せ押せな男に女性は付いては行かないと。
「名前なんて大嫌いです。お菓子くれないし冷たいし可愛くないし足太いしテブだし料理出来ないしテブだし嫌いです」
『……え、悪口?…て言うか今テブ二回言っただろてめー』
ギロリと怖くない目でボクを睨み付ける名前。
『…そんなに私が嫌いならいいんじゃない?じゃあね』
ばいばい、とそう言ってボクに背を向ける。
……え。
「待ってください、名前っ」
どうして行ってしまうんですか。
…兄上の嘘つき。嘘つき。名前が離れて行くなんて、聞いてない。
『…何?私の事嫌いなんでしょ?デブって二回も言うぐらいだもんね』
「違います。…嫌いじゃ、ない」
『は?』
ボクが名前を嫌う筈がないのに。
本当は言うのだって嫌だったんだ。
「ボクは名前が好きです」
『え…ちょ、話が見えな…』
「あいしてるんです」
『……!』
…あれ、おかしいな。名前の顔が赤く染まってる。どうしたんだろうか。
『……っ、ばか…』
「…ハイ、スミマセン」
む、と怒ったように唇を突き出している名前。
…ああどうしよう。かわいくて食べてしまいたい。
「名前、好きですよ」
堪らず唇にかじりついてやれば、小さな悲鳴と甘い味が広がった。
真っ赤な唇に
ボクのモノだとしるしを付けようか。
(…いってえええ!)
(名前の血は甘いですね)
(……あ、甘い?)…て言うか、何であんな悪口言ったの?)
(…兄上が、押してダメなら引いてみろと言ったので)
(……なんか違くね?ただの悪口だよアレ)
(…スミマセン)
((なんやこの生き物めっちゃかわええ…!))
ほんと可愛いよねモグモグ
2012/02/06