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廊下の真ん中に座り込んで泣きじゃくるわたしはきっと滑稽なんだろう。引かない涙に自分でもうんざりする。
時々生暖かい風が吹いて肌を滑っていく。わたしのこの気持ちも同じように攫っていってくれたらいいのに。
「…すまない」
どれくらい経ったのかわからなくなった頃、わたしを抱き締める真田くんからそう声が降ってきた。
『な、んで、』
「…俺が、お前に告白などしてしまったからだろう。…すまない、聞くつもりはなかったのだが…」
ああ、そうか。真田くんはわたしと蓮二くんとの話を聞いてたんだ。悪い事をしてしまった。一番悪くない彼を、わたしは巻き込んでしまった。
『あや、まらない、で。真田くんは、悪くない』
しゃくり上げながら懸命に繋いだ言葉ほど、きっと説得力はない。だけど誤解して欲しくなかった。苦しいほどの恋心を抱いたこの人に、謝らせたくなんかなかった。
『わたしが、悪いの。わたしが全部、』
「みょうじ。俺でよければ話してくれないか?正直、今のお前は見ていられない」
涙で濡れた頬を優しく拭われる。ああ、そうだ。わたしはこの人の、こんな不器用な優しさが大好きだった。
視界が膜で覆われる中、わたしは彼の腕の中で小さく頷いた。