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「お、終わったあああ…!」
チャイムと同時に一人、また一人と席を立って雄叫び出す彼らにああ終わったんだ…と実感させられる。一学期最後のテストなので、後は結果と夏休みを待つだけなのだ。
『おわ、終わった…』
「お疲れさん。今回はなかなかにハードじゃったな」
『におくんいえー』
「いえー」
ぱちん、とだるだるなハイタッチをしてへらりと笑う。完全燃焼だ。
「なまえなまえ、帰り暇か?飯食ってかん?」
『…あ、ごめん。わたしちょっと用事あるんだ』
「用事?」
『うん』
ふと笑むと、仁王くんは察したのかわたしの頭を撫でてきた。
「…ほーか。じゃ、まーくんは一人寂しく帰るとするかのう」
『あははっ、今度何か奢るから許してよ』
「クレープがええナリ」
『この甘党め』
案外可愛いなこの子。なんて思いながらまたねと手を振って仁王くんとは別れた。今日は金曜日だから、帰りにどこかへ寄ってく人も多いだろう。いいなあなんて思ってたら、携帯が小さく振動した。
from:柳蓮二
sub:すまない
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用を済ませてから
向かう。少し時間
が掛かるかもしれ
ないが、待ってい
てくれないか?
珍しく長文なメールに面食らいつつもカチカチと返信する。
to:
sub:了解!
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じゃあ教室で待っ
てるね。
テストお疲れ様!
最後に百点の絵文字を付けてそう返せば、なまえもお疲れ様。と返事が返ってきた。
『…よし、』
暫く携帯を握り締めてから外を眺めると、蝉の鳴く声が聞こえてくる。夏を思わせるそれに、わたしの鼓動はまだ高鳴ったままだった。