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思ったよりもテストの出来は良く、確認の為の答え合わせは通常より丸が多かった。
蓮二くんに理数科目を教えて貰ったので、他の教科に回す時間が多くなった事もひとつ言える。
テストも半ばを迎え、折り返しとなった明日の科目は魔の理数地獄。蓮二くんに教わったところを再度復習して、わたしはノートを閉じた。と同時に、机の端に置いてあった携帯が震え出す。
『…蓮二くんだ』
どうやらメールではなかったらしく、ディスプレイに映し出されている電話のマークに取るのを躊躇する。
『…も、もしもし』
とりあえず出なければ、と思い耳元に携帯を持っていくと、直接届く蓮二くんの声。
「遅かったな」
『だって、電話なんて初めてだったから…』
「ふ、まあなまえが俺の電話に躊躇する確率は高かったが」
『わかってたなら急にしてこないでよう』
むっと唇をつきだしてむくれてやると、「そう怒るな」そう言って蓮二くんはくつくつと笑う。
「少し、なまえの声が聞きたくてな」
『…!』
「勉強中だったか?」
『う、ううん。丁度終わったとこだよ』
「そうか」
相変わらずさらりと流される言葉は慣れない。
テストは基本お昼までなので、わたしはいつものように生徒会室へ行くことなく岐路につく。だから、蓮二くんとはあまり話していない事になる。だからこの電話が嬉しいなんて、思ってしまう自分が居た。
「最近あまり一緒に帰る事もないからな。たまにはこうやって電話するのも悪くないだろう」
テスト週間というのもあるけど、最近友達と遊んだりという機会が少なかった。それを蓮二くんに言うと、蓮二くんは「俺もテスト期間は用があるからな」と言って友達を優先させてくれた。だから帰り道も一緒じゃなかったりする。
『テストが終わったら、また一緒に帰ろうよ。今日ね、寄り道して新しく出来たクレープ屋さんに行ったんだ』
「……」
『…?蓮二くん?』
突然無言になった蓮二くんに問い掛けると、少しの間の後にすまないとだけ返ってきた。
「…そうだな。また、テストが終わったら」
『うん…』
「今日は突然すまなかった。では、おやすみ」
わたしの返事を待つ前に、電話は小さな音を立てて切れてしまった。
『…れん、じ、くん?』
名前を呼んでも、返事はない。
ツー…と流れる無機的な音が、どうしてか心の中にまで響いている気がした。