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テストを翌日に控えた今日、蓮二くんとの勉強会も最終日となった。
手紙の事をひた隠しにして数日、きっとわたしはうまく笑えてはいなかっただろう。少し前に、仁王くんが心配そうな顔で大丈夫かと聞いてきたから、多分蓮二くんも気づいているんだろうなとぼんやりと考えた。
「終わったか?」
いつも通り、放課後の図書室でノートを書いていると、わたしの様子に気づいた蓮二くんが本から顔を上げた。
『…うん、丁度終わったよ。一週間本当にありがとう』
「いや、元は俺から頼んだからな。当たり前だ」
するりとわたしの髪を撫でて優しく微笑む蓮二くん。そんな些細な仕種にちくりと胸が痛む。
「なまえ…テストが終わったら、少し話があるんだ」
『…話?』
「ああ」
眉を寄せて悲しそうに笑う彼が、痛々しく見えるのは気のせいなんだろうか。もう夏なのに、冷や汗が肌を伝う。
『…わたし、も』
「なまえ?」
『わたしも、蓮二くんに話があるの』
まっすぐ彼を見つめて、わたしはそう言った。ピクリと蓮二くんの肩が跳ねたのは、きっと見間違いじゃない。
「…わかった」
小さく微笑んで、蓮二くんはまた本へと視線を戻す。
視界の端に彼が映る度、胸が締め付けられるような気持ちになる。それと同時に、たくさんの感情が流れ込んでくる。
(…あと、五日)
五日後に、全部わかる。今わたしが抱くこの気持ちも、真実も。
スカートの上で握り締めた手に、わたしは無意識に力を込めた。