Lover's Letter | ナノ




25



テストを翌日に控えた今日、蓮二くんとの勉強会も最終日となった。

手紙の事をひた隠しにして数日、きっとわたしはうまく笑えてはいなかっただろう。少し前に、仁王くんが心配そうな顔で大丈夫かと聞いてきたから、多分蓮二くんも気づいているんだろうなとぼんやりと考えた。



「終わったか?」



いつも通り、放課後の図書室でノートを書いていると、わたしの様子に気づいた蓮二くんが本から顔を上げた。



『…うん、丁度終わったよ。一週間本当にありがとう』

「いや、元は俺から頼んだからな。当たり前だ」



するりとわたしの髪を撫でて優しく微笑む蓮二くん。そんな些細な仕種にちくりと胸が痛む。



「なまえ…テストが終わったら、少し話があるんだ」

『…話?』

「ああ」



眉を寄せて悲しそうに笑う彼が、痛々しく見えるのは気のせいなんだろうか。もう夏なのに、冷や汗が肌を伝う。



『…わたし、も』

「なまえ?」

『わたしも、蓮二くんに話があるの』



まっすぐ彼を見つめて、わたしはそう言った。ピクリと蓮二くんの肩が跳ねたのは、きっと見間違いじゃない。



「…わかった」



小さく微笑んで、蓮二くんはまた本へと視線を戻す。
視界の端に彼が映る度、胸が締め付けられるような気持ちになる。それと同時に、たくさんの感情が流れ込んでくる。



(…あと、五日)



五日後に、全部わかる。今わたしが抱くこの気持ちも、真実も。

スカートの上で握り締めた手に、わたしは無意識に力を込めた。


 


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