Lover's Letter | ナノ




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わたしは告白なんかした事がなかった。だから、どうやって気持ちを伝えたらいいのかなんて知らなくて。たまたま彼が好みそうなのが、手紙だっただけ。それすら今じゃわからないけど。

告白する三日前から書く内容を考えて、何度も何度も下書きを作って、書いては捨てを繰り返した。
便箋を買うのだって、時間も惜しんで悩んだ。真田くんはどんな手紙を貰ったら嬉しいんだろう、とか、飾り気のない方がいいかな、とか。
一言で言えば楽しかった。彼の事だけを考えて、悩んだものだから。



今目の前にある書きかけの手紙を握り締めてるわたしは、一体どんな顔をしてるんだろう。視界が歪んで見えないや。



『……っ、』



…不思議に、思わなかった訳じゃない。ただ、その時は気が動転してわからなかった。
確かにわたしは真田くんに告白をした筈なのに、あの時屋上には彼が居た。靴箱を間違えたっていう事実は変えられないけど、手紙の内容だって、変えられない。



白の封筒の裏に、自分の名前を小さく添えたそれ。宛名を書かなかったのは、恥ずかしさもあった。



『…どう、して?』



ねえ蓮二くん、もしわたしがあの時気づいていたら、どうしてたの?



ポタリ、頬を伝って落ちた涙が、白の便箋に黒を作った。


 


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