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蓮二くんに、キス、された。
名残惜しくも離れて行ってしまった熱は、一日経った今ですら感じる事が出来る。あれからどうやって帰ったとか、何を喋ったとかは覚えていない。ただ覚えているのは、見上げた蓮二くんが悲しそうに、でも幸せそうな表情をしていた事だけ。
『…初めて、だったんだけど、な』
ファーストキスだった。高校生にもなってキスさえまだだったなんて笑えちゃうけど……いやじゃ、なかった。キスだって、それ以上だって、好きなひととしかしたくないのに。いやじゃ、なかったの。でも、幸せだとか、嬉しい、とか。そんな感情は罪悪感によって消されてしまった。…涙が出そうだった。ごめんなさいって謝って、全部吐き出せたら楽だったかもしれない。でもそれが出来なかったのは、蓮二くんのあんな表情を見てしまったから。
『……っ、』
痛い。ズキズキと胸が痛む。日に日に酷くなっていくそれは、蓮二くんに対しての罪悪感なのかわからない。
だけど、未だに頭にこびりつく彼の表情すら、わたしは愛しく感じてしまうのだ。