18
テニス部のミーティングは空き教室を使うらしく、待ち合わせは教室でという事になった。
夕方特有のオレンジの光が流れ込む教室で一人、外を眺める。ちらりと時計を見やると、もう30分ほど経っていた。
『終わったかな…』
カタンと席を立とうとしたら、ほんのり冷たい何かが首に触れた。
『ひゃ…っ!?』
びっくりして肩を震わせるわたしに、後ろからくつくつと笑い声が聞こえてくる。まさか、と思い恐る恐る振り返ると、口元に手を添えた蓮二くんがおかしそうに笑っていた。
『れ、蓮二くん…!』
「ああ、すまない。一応声は掛けたんだが」
絶対うそだ。だって笑ってるもん、悪戯が成功したみたいに。…そんな顔されたら、怒るのも怒れないよ。
「帰るか」
『…うん』
すまないな、って言いながら優しく頭を撫でる蓮二くんに小さく笑えば、ソッと手のひらを重ねられる。トクリ、高鳴った心臓と徐々に熱くなる頬がわたしを追い詰めていく。
「なまえ?」
呼ばれた名前に俯きがちになっていた顔を上げると、わたしの視界には目を見開いた蓮二くんの姿。どうしたの?なんていう問いは、柔らかな感触によって掻き消されてしまった。
『……!』
目の前にある端正な顔と感じる熱に、わたしは目を見開いたまま動く事が出来なかった。