Lover's Letter | ナノ




17



休み時間に仁王くんと話していたら、さわりと教室がざわついた。



『?なんだろ』

「………あ、」

『どうしたの仁王く…』



声を漏らした仁王くんの視線を辿れば、そこには蓮二くんが居た。どうやら思ってもみない人の登場に、女子が騒いでいたらしい。そう言えばテニス部って有名だったなあとぼんやりしていれば、「仁王」と目の前で声が聞こえた。



「お、おお参謀。珍しいのう、どうしたんじゃ?」

「今日の午後はミーティングのみだと連絡が回ってきてな。それを伝えにきた」

「そう言えばテストが近かったけえのー」

「…ちゃんと勉強しておけよ。赤也のように赤点など取ったら、弦一郎からの制裁が待っているからな」

「俺を赤也と比べるんはよしんしゃい」



目の前で会話が並べられていく。わたしはというと、そのやり取りをただ横で聞いているだけ。仁王くんがたまにわたしの顔を見るけど、蓮二くんはわたしを視界にすら収めない。



「では、また放課後に」

「了解」



そんな事を考えていたら、会話は終了してしまったらしい。くるりと方向転換した蓮二くんに少しだけ目をやると、バチリ、視線が交わった。



『…!』



薄く開けられた目が、ふと優しく笑む。他の人にはわからないようなその仕種が、わたしに向いている。



『…れ、んじ』



くん。不意に呼ぼうとした名前に、彼は背を向けて、そしてゆっくりとした動作で教室を出て行ってしまった。



『あ…』



何でだろ。聞こえてた筈なのに。蓮二くん、と言葉になるかならないかの小さな声で呟いた。すると、わたしの知らず心情を察したのか、ポケットに入れていた携帯が震えた。




from:柳蓮二
sub:今日
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ミーティングが終
わったら、一緒に
帰らないか?



絵文字のないシンプルなメールに、わたしは短く返事を返す。その時の自分の顔がどんな表情をしてたなんて、わたしは知らない。


 


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