Lover's Letter | ナノ




15



「俺はお前に、側に居て欲しいんだ」




その言葉が、頭の中で何度も響いてる。
図書室の外が見える窓際の椅子で、わたしはテニスコートを眺めていた。視線の先にあるのは、今まで追うことのなかった背中。ノートを片手に佇む蓮二くんに、知らず知らず目が行っている。



『……れんじ、くん』



オレンジ色の日射しが入り込む放課後の図書室に小さく反響するその名前。誰もいなくてよかったなあなんて思いながら肘を付いた。



あれから、あの女の子たちには呼び出されていない。遠巻きにわたしを見ているのはわかったけど、一切話し掛けてこなくなった。多分、蓮二くんや仁王くんがどうにかしてくれたんだと思うけど、蓮二くんに聞いたらうまくはぐらかされた。



こうやって部活終わりの蓮二くんを待つのに抵抗がなくなったのは、いつからだろう。少なくとも、最初のように携帯を見て震える事はなくなった。お昼と帰り、わたしたちが会うのは決まってそうで、校内で会う事はあまりない。それが少しだけ切ないのは、何でだろう。



『…わたし、』



わたしは一体、どうしたいんだろう。わからない、わたしは確かに真田くんが好きなのに。真田くんの事を考えると、頭の端に蓮二くんが現れる。
怖い、何かが変わっていっているような気がして。わたしがこんな事、言える立場じゃないのに。



あの日、屋上に彼を呼び出してから、気がつけば一ヶ月の月日が経とうとしていた。


 


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