13
「すまない、待たせたな」
校門の前でカチカチと携帯を触っていたら息を切らしながら走ってきた蓮二くんがそう言った。
『ううん、大丈夫だよ。部活お疲れ様、そんなに急がなくてもよかったのに…』
「いや、遅くまで待たせてしまったからな。送って行こう」
ありがとう、とお礼を言って歩き出す。無自覚に振り返ってあの後ろ姿を探していた自分に少し呆れた。
「…今日、」
『え?』
「用事があると言っていたな」
『あ、お昼…』
「いや、実は俺も用があって連絡しようとしていた」
『……え、』
その言葉にはた、と立ち止まるわたし。そして振り返って笑みを浮かべているであろう蓮二くん。
「そうでなければすぐに返事は返せないだろう?」
『……』
ふ、と笑う声が聞こえた気がする。
…どうしよう、蓮二くんが怖いです。怒りとかいう感情よりもそんなものが渦巻いて少し笑ってしまった。そんなわたしを不思議に思ったのか、蓮二くんはどうした?と聞いてくるけどわたしを嵌めたんだからちょっとくらい困ればいいんだ。
『何でもないよ』
「…そう言われると気になるのが人間だ」
『さんぼーだったらわたしに聞かなくてもわかるんじゃないですか?』
「…ふむ、ではなまえの身体に聞いてみようか」
『……!』
暗んでいく空に目が慣れたのか、蓮二くんが厭らしく笑ったのが見えた。その言葉が本気に聞こえたので、とりあえず素直に謝ったら冗談だと頭を撫でられた。
…やっぱり彼は怖いです。