08
…来てしまった。魔の生徒会室に。
『うぇああう…』
お昼休みになるの早いよー…と此処までの道のりで何度教室へ帰ろうとしたことか。軽く仁王くんに同情されたよ。俺は参謀に同情するぜよって返されたけど。
『うー…』
ドアノブに手を掛けたり外したりともう何回も繰り返しているこの動作。ああもうお昼休み半分しかないよ……よ、よし、がんばれわたし!意を決して力を込めた瞬間、内側から扉が引かれた。
『え、あ、ひゃあ…!』
あ、ドアノブの手離せば良かった。とどこか冷静な頭で考えながら来るであろう衝撃に目を瞑る。
『…?あれ、痛くない』
おかしいな、と目を開けると心なしか前が暗いし痛いというよりか柔らか「案外、大胆だな」………、……
『え、え、やな、柳く…!?』
「何で、とみょうじは言う。…唸り声が中まで響いていたからな、流石に分かるさ」
『う…』
恥ずかしい…!今わたしすごく恥ずかしい人じゃないか!柳くんは多分この状況を見越して待っていたに違いない。くそう、いい性格してらっしゃる。
「俺としてはこの状況は美味しいが、生憎昼休みも限られている」
『え?…あ、ごめんなさい!』
「いや…」
そう言えばわたし抱き締められたままだった!バッと離れると、柳くんは眉を下げて残念だな、と笑みを浮かべながら呟いた。…柳くんはいろいろ危険過ぎると思う。
「ところでさっき送ったメールだが」
『うん?』
「仁王だろう」
『え、何でわかったの!』
「…文章には個々の特徴があるからな。それがメールであれば案外わかりやすいものだ」
ふと笑む柳くんに、ああ、これはモテるなと直感で感じた。仁王くんもモテるけど、柳くんはまた違う…安心感みたいなのがある。
『…ね、柳くん』
「何だ?」
『あの…』
…何でわたしを好きになってくれたの?なんて、わたしはそれを聞いてどうしたいんだろう。わたしはただ、手紙を出す相手を間違えただけなのに。
『…ううん、何でもない。このソファ気持ちいいね!』
「…そうか」
黒のソファにもたれ掛かって柳くんをちらりと見る。真田くんとは違う、けど男らしい身体つき。少しだけその背中が寂しそうに見えたのはどうしてだろう。