01
すう、と息を吐いて辺りに誰もいないか確認する。現在7時30分、朝練の部活以外の生徒がこんなに早く来る事はまずない。…はず。
『……』
こくりと喉を鳴らして、手に持つ手紙に力を込める。そして目当ての靴箱をゆっくり数えて、それを中へと入れた。
『…すき、です』
小さく呟いた言葉に、目の前には靴箱しかないのに顔が熱くなる気がした。ぺこりとその場でお辞儀をして、わたしは振り返らずに教室まで駆けた。
…わたしは今日、ずっと好きだったひとに告白します。
「なまえ、おはようさん」
『あ、におうくんおはよう!』
そわそわと身体を動かしながら外を眺めていると、背中越しに声が掛かる。振り返って挨拶すると、仁王くんはニヤニヤと笑いだした。
「お前さん、今日は珍しく早かったみたいじゃけど…やっと出したんか?らぶれたー」
『…!仁王くん!しっ、しーっ!』
舌足らずに口にした言葉にバッと口を塞ごうとしたけど普通に避けられた。…くそう。
「そんな顔で睨んでも怖くないぜよ。なまえ、お前さん今どんな顔しとるかわかっとる?」
『え?』
「幸せそうな、顔しとるよ」
『…!』
カァアア…!と熱が上昇していくのがわかる。まさか、顔に出てたのかな、わたし。嘘?と思ったけど、わたしを見る仁王くんの表情がすごく優しいものだったから、多分ほんとうなんだろうな。
「いつ返事貰うんじゃ?」
『あ、えと、…放課後に、屋上で…』
「…ほー」
にんまりと笑みを浮かべる仁王くんに疑問符を浮かべていると、ぽんと頭に大きな手が乗ってきた。
「お前さんなら大丈夫じゃろ」
『…うん』
「あーあ、羨ましいナリ。俺もなまえかららぶれたー欲しいぜよ」
『…ばか』
へらりと笑って冗談を言う仁王くんに小さく笑みが溢れる。
待ち遠しくもあり、少しだけ怖い放課後が今は楽しみで仕方なかった。