現世のモンってのも、意外に悪かねえ。
「なまえ、そのファイル取ってくれ」
「…はい」
「なまえ、手前のビンと試験管」
「……はい」
「なまえ「…阿近さん」…あ?」
振り返った先には右手にビン、左手試験管を持ったなまえがキッと俺を睨みつけてそこに立っていた。
「なにンな顔してんだよ」
「なにって…そんなの私が聞きたいですよ!なんで私こんな格好してるんですか!」
ダンッ!とビンを机に叩きつける勢いで置くと、なまえは半涙目ながらに俺を見上げた。
「俺は似合ってると思うけどな」
「なに感想言ってるんですか!第一これ、丈短いし、フリフリ付いてて擽ったいし…!」
「まあメイド服だから」
「め、めいど…?」
小首を傾げて何ですかそれ、と問うなまえ。
ぶっちゃけ言うとかなりクるものがある。…が、世辞無しに可愛いと思ってしまう俺はどうやらかなりイカれてるらしい。
「現世でいうお手伝いさんみたいなもんだ」
「お手伝いさんて…なんで阿近さんがこんな服持ってるんですか」
「檜佐木副隊長に現世土産で貰った」
「なにやってんのあの変態副隊長」
心底馬鹿にしたような呆れた表情に苦笑する。
けどまあ貰った時からなまえに着させる事は決まってたんだがな。
「…つかお前、何も言わず着てんじゃねーか」
「だ、だって阿近さんが着ないと変な事するって言ったから…!」
あー…わかってねえな、コイツ。
カァア、と頬を赤く染めるなまえについ表情が緩む。…無垢過ぎるってのも、ある意味罪だな。
「…俺がそんな約束、守るとでも思ってんのかねえ」
「は…え、ちょっ!」
服から伸びた白い腕を取って近くにあったソファへと押し倒す。ガチャンと音を立てた試験管を尻目に、露になる足へ手を這わせた。
「ひゃ…っ」
「…なまえ、知ってるか?現世にはメイドプレイってのがあるんだってよ」
俺としちゃ、なまえがご奉仕してくれりゃいーんだが…初心者には身体で覚えさせてやらねぇとな。
「今日のところは、俺がご奉仕してやる」
「ぁ…っ、ちょ、ご奉仕ってな…に、んっ!」
ちぅ、と首筋へ口づければたちまち甘い吐息を吐く。…あーやべえ、ハマっちまうかも。
「…エロいメイドだな」
赤く色づく頬に、荒い息遣い。はだけた服から覗く肌すら、ほんのり色づいている。
「教えてやるよ、メイドの仕事ってやつをな」
自然と上がる口角に、俺はきっといやらしい笑みを溢しているに違いない。
だがまあ…無知な彼女に身体で教えてやるのも悪くはねえと思った。
技局の鬼とメイド服
2012/02/06
2013/02/07 加筆