Crazy Crazy7. | ナノ
「久しぶりじゃねーか、名前」



-Night time-




行きつけの呑み屋のカウンターで少し強めの焼酎を呷る。



「久しぶりっつっても一週間も経ってねぇけどなァ」

『そうですねぇ…』

「…シケた面してやがるなァオイ。酒が不味くなんだろーがよ」

『そうですねぇ…』

「……チッ」



クイッとお酒を呷る一角さんが視界の端に映る。
頼んであったつまみに手を付けながら同じようにお酒を呷った。



「…お前酒弱かったんじゃねーのか?無理してペースに付き合わなくたって…」

『……今日は呑みたい気分なんです』

「…そうかよ。あんま無理すんじゃねーぞ?」



溜め息を吐く一角さんに心の中で謝って、一回、また一回とお酒を呷る。



「……技局でなんかあったのか?」



その一言に、お酒を呷る手が止まった。



『…何でですか?』

「お前はいつもなんかありゃあ酒に手ェ出すクセがあっからな。伊達に長く居るんじゃねーんだ。…言ってみろよ」



仕方ないように苦笑して、私の頭を痛いくらい強く撫でる。

その行動に、あの人を思い出して…少しだけ泣きそうになった。



「…阿近か」



一通りあった事を全部話すと、一角さんはいつもより二割増しに眉間へ皺を寄せた。



「お前そりゃあれじゃねーのか?」

『あれ…?あれって何ですか?』

「……」



…何でマジかよみたいな目で見るの。ひどい。ハゲのクセに。



「あー…何だ、お前阿近見るとどう思う」

『…?どうって…ドキドキ、します…?』

「何で疑問系なんだよ。つーか…やっぱりか。まさかお前がなァ…」



ニヤニヤとにやける一角さんにすごく苛々する。…何なのほんと。ハゲ。



『…それが何ですか。別にドキドキするだけですけど』

「そう突っ掛かんな。…まあ、俺としちゃお前が帰って来る事に関しては異論はねェ。…けどな、お前はどうなんだ?」



クイ、と顎でしゃくられて首を傾げる。……私?



「嫌だって、思ったんじゃねーのか?」

『あ…』



放たれた言葉を思い出す。

私…嫌、嫌…だった?…ううん、違う。ただ、



『離れたく、なかった』



そう呟いたら、一角さんが目を見開いてニヤリと笑った。



「…ほらな。まあよく考えるこった。別に一生の別れじゃねーんだ、こうやって呑みに行けるしな。お前がどうしたいか決めりゃあいいさ」

『……はい。ありがとうございます、一角さん』



コクリと呷ったお酒は、今まで呑んだものよりも美味しかった。



2011/11/16
2013/02/23 加筆

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