「久しぶりじゃねーか、名前」
-Night time-
行きつけの呑み屋のカウンターで少し強めの焼酎を呷る。
「久しぶりっつっても一週間も経ってねぇけどなァ」
『そうですねぇ…』
「…シケた面してやがるなァオイ。酒が不味くなんだろーがよ」
『そうですねぇ…』
「……チッ」
クイッとお酒を呷る一角さんが視界の端に映る。
頼んであったつまみに手を付けながら同じようにお酒を呷った。
「…お前酒弱かったんじゃねーのか?無理してペースに付き合わなくたって…」
『……今日は呑みたい気分なんです』
「…そうかよ。あんま無理すんじゃねーぞ?」
溜め息を吐く一角さんに心の中で謝って、一回、また一回とお酒を呷る。
「……技局でなんかあったのか?」
その一言に、お酒を呷る手が止まった。
『…何でですか?』
「お前はいつもなんかありゃあ酒に手ェ出すクセがあっからな。伊達に長く居るんじゃねーんだ。…言ってみろよ」
仕方ないように苦笑して、私の頭を痛いくらい強く撫でる。
その行動に、あの人を思い出して…少しだけ泣きそうになった。
「…阿近か」
一通りあった事を全部話すと、一角さんはいつもより二割増しに眉間へ皺を寄せた。
「お前そりゃあれじゃねーのか?」
『あれ…?あれって何ですか?』
「……」
…何でマジかよみたいな目で見るの。ひどい。ハゲのクセに。
「あー…何だ、お前阿近見るとどう思う」
『…?どうって…ドキドキ、します…?』
「何で疑問系なんだよ。つーか…やっぱりか。まさかお前がなァ…」
ニヤニヤとにやける一角さんにすごく苛々する。…何なのほんと。ハゲ。
『…それが何ですか。別にドキドキするだけですけど』
「そう突っ掛かんな。…まあ、俺としちゃお前が帰って来る事に関しては異論はねェ。…けどな、お前はどうなんだ?」
クイ、と顎でしゃくられて首を傾げる。……私?
「嫌だって、思ったんじゃねーのか?」
『あ…』
放たれた言葉を思い出す。
私…嫌、嫌…だった?…ううん、違う。ただ、
『離れたく、なかった』
そう呟いたら、一角さんが目を見開いてニヤリと笑った。
「…ほらな。まあよく考えるこった。別に一生の別れじゃねーんだ、こうやって呑みに行けるしな。お前がどうしたいか決めりゃあいいさ」
『……はい。ありがとうございます、一角さん』
コクリと呷ったお酒は、今まで呑んだものよりも美味しかった。
2011/11/16
2013/02/23 加筆
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