Crazy Crazy7. | ナノ
何故かわからないけど、阿近さんに頭を撫でられる事は嫌いじゃない。それはただ、撫でられる事に抵抗が無いからなのか。

…でも、その度に胸がドキドキするのは何でなんだろう。



-Third day-




「…苗字?」

『あ、は、はい!』



ぼぅ…と阿近さんの横顔を眺めていれば、不意に名前を呼ばれて声が裏返る。



「何ボーッとしてんだ。おら、今言った事やってみろ」

『う…はい』



私は今、阿近さんと二人で実験演習をしている。

私の飲み込みの良さを買って、デスクワークだけでなく演習までしてくれるようになったのだ。



『え…と、これとこれを混ぜて…』

「違ェだろーが!!爆発するだろ!何聞いてんだてめェは!」

『痛い!』



…すんごいスパルタだけど。

殴られた頭に涙目になりながら言われたそれを混ぜて、すりおろした薬草や液体を調合する。



「……お、いい色になったな。お前意外と才能あるじゃねぇか」

『ほ、本当ですか?』

「ああ」ま、俺以下だけどな。と意地悪く笑う阿近さんにムッとするけど、どこか嬉しい自分が居る。

やっぱりこの人に褒められるのは、嬉しい。



「…このままなら実践でも使えそうだな。苗字、明日も今日と同じ事やってみろ」

『は、はいっ』

「元気だけはいいなァお前」



…ククッと喉を鳴らしながら笑う所とか、今みたいに煙草を銜える指とか。

何だろう…



『……色気?』

「…あ?色気?」

『あ…な、何でもないです!』



思っていた事が口に出ていたみたいで、慌てて否定する。

鋭い(とわかった)阿近さんはニヤリと笑うと、煙草を近くにあった灰皿に押しつけて私の腕を引いた。



『きゃ、ぁ…!』



仮眠用に置いてあったソファにそのまま押し倒されて、阿近さんが私の上に馬乗りになる。なんとか逃れようと身を捩るけど、意味なんて成さなかった。



『ど、退いてください阿近さんっ』

「…嫌だっつったら?」

『な…っ』



ニヤニヤとまるで私の反応を楽しむように笑うこの男。



『何が楽しいんですかっ!』

「ククッ…お前自分の顔見てみるか?耳まで真っ赤だぞ?」

『あ、当たり前じゃないですか…!こんな事されたら誰だってこうなりますよっ』

「ふーん?」



つぅ…と顎を撫でたり、頬を撫でたり。それが止まったかと思えば、真剣な表情で私を見下ろす。



『あ、阿近さ…』

「…黙ってろ」



ソッと頬に手を添えられて、唇に阿近さんのそれが近づいてくる。

まさか、と予感が過って、抵抗など出来ない私は目を瞑る事しか出来なかった。



「………ガキ」

『…は?』



ポソリと聞こえた言葉に瞑っていた目を開けると、ククク…とさぞ楽しそうに笑う阿近さんが居た。



『な、な…!からかいましたね!?』

「…ククッ、俺は別にしても良かったけどな」

『…!』



この人はどれだけ人をからかえば…!



『最っ低です!阿近さんなんか嫌いっ』



退いてよー!と阿近さんの胸をぐいぐい押して、やっとの事で起き上がった私の腕をさっきと同じように掴まれる。



『もう、いい加減に…』

「…さっきの」

『え?』

「さっきの言葉、本気だったらどうする」



そう私に問い掛ける阿近さんの目は、男の色をしていた。



2011/11/16
2013/02/23 加筆

/
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -