苗字名前が技局に配属されて二日目、俺はあの女の目を思い出しながら口元に笑みを作った。
-Second day-
「苗字名前…ねぇ」
最初胸元掴まれた時にゃ苛めてやろうと思ってたが…
「…まあ、思った通りだな」
今度は堪えられる奴が来たってことか。
「阿近さん」
「……あ?」
「苗字さんが探してましたよ?」
「…そうか」
どうかしたんですか?と首を傾げる壺府に何でもねぇよと告げて苗字の部屋へと向かう。
『あ、阿近さん』
「…ああ、何だ?」
最初は喧嘩腰だった此奴も、二日経った今では柔らかな笑顔を浮かべる。…どうやら昨日の一件で懐かれてしまったようだ。
『…別に懐いてないです。頼れる人が阿近さんとリンくんしか居ないから仕方なくです勘違いしないでください』
「照れんなよ」
『照れてねーよ!』
バンッと手に持っていた資料を机に叩きつける。
あー…やっぱ此奴根っからの十一番隊だな。
「…つかいつから名前で呼ぶようになったんだ?」
壺府の事、と過去の資料をパラパラ捲りながらそう言えば、苗字はさっきよりも柔らかな笑みを浮かべた。
『実は昨日、終わった報告書を届けた時に…よかったら名前呼んでくださいって、言われたんです』
「……へェ」
『お饅頭も貰ったんですよ?』
「……」
…別に羨ましくねぇよ。ドヤ顔すんな。
壺府がねぇ…ったく、何やってんだ彼奴。
『…あと、阿近さんの言った事が本当だったのもわかりました』
「……あ?」
『やっぱり私、良く思われてないんですね』
へらり、笑う苗字が寂しそうに見えたのは、俺の贔屓目だろうか。
『……あーあ、早く帰りたいな…』
そう小さくぼやく苗字に、俺は頭を撫でてやる事しか出来なかった。
2011/10/26
2013/02/23 加筆
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