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▼ Anemone / アネモネ : 嫉妬の為の無実の犠牲 1/3 side銀時



…結局また出てきちまった。
俺を思っての新八の言葉を素直に受け止められないほど、今の俺の精神状態は不安定だった。原因はただ一つ。それは新八と神楽が定春の散歩に出かけている時に鳴った一本の電話から始まった。



・・・・・・・



「万事屋でーす」

『テメェ、今どこにいる』

「…いや、どこって。お前今うちに電話してんだろ?だったら一つしかねェだろーが。つーか名前くらい名乗れよ、お巡りのくせに非常識なヤローだな」

『細けェこたァいい。30分以内に屯所まで来い、いいな。1秒でも遅れたら切腹だ』

「なっ、オイ、待て……って切れてやがる。何つーヤローだ。こちとらテメェのツラなんて見たかねェってのによ」


ニコチン野郎からの電話に、俺は渋々支度をして真選組の屯所へと向かった。アイツがわざわざ俺を呼び出すなんざ、理由は一つしかねェだろう。もう、これ以上傷ついた心を引っ掻き回すのはやめてほしいんだけどなァ。


「すんませーん、おたくのバカ副長に呼ばれてきたんですけどォー?」

「旦那ァ。待ってやしたぜ、こっちでさァ」

「総一郎くんじゃないの、久しぶりだなァ」

「総悟でさァ」


早々に出くわした沖田に連れられてやってきたのは、土方の私室と思わしき和室。縁側に座り込むその背中を見て、俺はため息をついた。


「わざわざ呼び出して、何の用だよ?俺はテメェみたいな暇人じゃねェんだよ、この税金ドロボーめ」

「ガタガタうるせェよ、ここへ座れ」


何だかいつもと調子が違う土方に、俺は居心地の悪さを感じながらも促されるままに土方の隣へ腰をかけた。沖田はそれを見届けるとさっさと部屋を出て行ってしまった。オイオイ、今こいつと二人っきりにすんじゃねェよ。もうこうなったらどう考えてもあの話題しかねェじゃねーか。


「もう過ぎたことをどうこう言うつもりはねェ。だから簡潔に言わせてもらう」

「…そのことなら、悪かったよ。まさか、お前のアレだとは知らなかったんだ」

「悪かったで済むなら俺らはいらねェだろーが。一人の女傷つけといて、そんな言葉で片付く問題か?あァ?」

「こっちだってズタボロに傷ついてんだよ、知らなかったっつってんだろ?もう会ったりしねェから、安心しろよ」

「テメェ…」


ボリボリと頭を掻いて立ち上がろうとした俺の腕を、土方は思い切り引っ張った。何だよ、と出かかった言葉は飛んできた拳によって阻まれた。豪快に部屋にすっ飛んだ俺は、キッと土方を睨みつけた。


「安心しろだァ?テメェあいつのこと、何も考えてねェんだな」

「何すんだよ、殴りてェのは俺の方だってんだ!テメェの女だって知ってたら、手ェ出さなかったよ!こんな気持ちにもなんなかったっつーんだよ!俺の気持ちは無視かよ…ッ」

「…俺の女だァ?何の話だ、そりゃ」

「はァ?テメェあいつと付き合ってんだろ?何の話もクソもあるかよ。ったくとんだピエロだよ、俺ァよ」

「……は?」


俺の前で仁王立ちをする土方は、驚いたような表情を浮かべて、すぐに不機嫌そうな顔で俺を見下ろした。…何だよ、こいつの反応は。




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