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▼ Marigold / マリーゴールド : 悲しみ、絶望 1/2 ☆




感情に任せて長屋の階段を駆け上がった。彼女に会って何を言うつもりなのかも、何をするつもりなのかも、自分自身何もわからなかった。

何故、こんな時間にあいつといたのか。
何故、あいつのことは下の名前で呼ぶのか。
何故、俺の言葉に動じなかったのか。
何故、彼女はあんなことを言ったのか。

…俺はそんなことが、聞きたいのだろうか。

力任せに古びた戸を叩く。出てこなかったら、どうしようか。そんな気持ちをよそに、パタパタと足音が聞こえた。開かれた戸の先にいた彼女の瞳が、僅かに濡れているように見えた。構わずに細い手首を掴んで部屋に押し入った。


「万事屋さ…」


耳に届くか細い声を振り払うように、なまえを畳の上に押し倒した。痛そうに手首を摩る彼女の襟元を強引に開いて、白い素肌に顔を埋めた。


…めちゃくちゃに、壊したい。


今までは俺なりに、彼女を大切にしてきた。気持ちよくさせたかったし、何より彼女とするキスも、彼女に施す愛撫も、俺は全てが好きだった。時間をかけるほど乱れていくなまえが、堪らなく愛おしかったから。こんな順序をすっ飛ばして、豊かな膨らみを強く揉みしだくなんてこと、ただの一度もなかった。鎖骨に舌を這わせて、強く吸いつく。同じように膨らみにいくつもの花を散らしつけた。首筋に吸いつこうとしたところで、彼女は漸く抵抗をした。


「やめ、…待っ、やめて」

「あのマヨヤローにバレたらマズイってか?」


…どうせ、俺のモノにならないのなら、この手で。


ぶんぶんと首を振る彼女に、俺は舌打ちをした。…何故、違う、とその口から言ってくんねェんだ。憤りをぶつけるように首筋に噛み付くと、なまえは小さく悲鳴をあげた。空いた手で柔らかな膨らみをやわやわと刺激すると、徐々に高くなる彼女の声。頂きを口に含んで、転がすように舌を絡ませるとなまえは大きく背を反らした。自分の行動のせいだっていうのに、そんななまえに苛立ちを覚える。こんな状況下でも、快感に身を委ねようとする彼女が、こんなことでしか自分の気持ちをぶつけられない自分が、…憎い。


「…万事屋さ、あ、っ何で…」


必死に快感の波に抗うように、眉を顰めて俺を恨めしそうに声を上げた彼女を黙って見下ろす。「…あ?」と掠れた声が俺の喉から漏れた。


「何で…っ、キスしてくれないんですか…っ」


その言葉を皮切りに、ボロボロと泣き出すなまえに、俺は思わず鼻で笑った。何でお前が泣いてんだよ。泣きてェのは、…こっちの方だよ。


「俺のことは万事屋さんなんて呼ぶくせに、あいつのことは名前で呼んでんだな」


絞り出したような俺の言葉に、なまえは僅かに目を見開いた。何か口にしようとした彼女の小さな唇を割り開き自身の指を突っ込んだ。俺の行動に、心底悲しそうに涙を流すなまえに、俺は思わず目を逸らした。


…誰にでも、そんなツラ見せるのかよ。


彼女の太ももに指を這わし、下着に触れたところでなまえはいやいやするように首を大きく振った。わかってる。こんなこと、したいわけじゃねェ。彼女の涙が見たいわけじゃねェ。…それなのに、俺の中にあるドロドロとした黒い感情が、理性を貪り尽くす。


…土方にも、お前が乱れる姿見せるのかよ。


「んー、んッ!!…っ」


少しも濡れていないなまえの中に指を突き立てると、彼女は大きく声をあげた。きつく俺の指の侵入を拒む中を、乱暴にかき混ぜただけで、なまえの中からは悦びの蜜が溢れてきた。俺は思わず自嘲するように笑った。


「…んっと、淫乱だな、…誰でもいいのかよ」


俺の言葉になまえは苦しそうに顔を歪ませて涙を流した。その顔から目を逸らすように、喉まで出かけた言葉を飲み込むように、自身のそそり立ったそれを、なまえの中へと突き刺した。


…俺はお前じゃなきゃ、ダメなのに。





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