beniiro tear | ナノ


▼ Clover / クローバー : 私のものになって 1/2



きっとこの気持ちを伝えたら、彼女は離れてしまうだろう。
彼女の求めるものは、俺じゃない。俺の中の男だ。
わかっているのに、鎮まることのない気持ちをどこにぶつければいいのだろうか。

いまにも溢れ出しそうな、この気持ちを。

_



彼女の部屋に足を踏み入れると、普段とは違う香りに俺の嗅覚が反応した。アルコールにあてられながら、ぼんやりとその匂いの元を辿ろうと鼻を鳴らすと、前を歩く綺麗な花が静かに振り返った。


「…甘い匂いがする」

「甘い匂いですか?」


なんの匂いだろう。何だか食欲を煽るような、そんな匂い。
「…なんつーか、パフェみてーな。甘ったるい」思ったことをそのまま口にすると、寝室の前で立ち止まったなまえは少し考えるような素振りをしてから俺の顔の前に自身の腕を差し出してきた。


「この香りですか?新しいストロベリーバニラの香りの石鹸…」


彼女の言葉を遮るように、その匂いの元の腕に噛み付いた。通りで、俺の嗅覚と食欲を刺激してくるわけだ。ただでさえ普段から甘い匂いの絶えない彼女から香るストロベリーバニラの匂いに、思わず手より口が先に動いていた。


「うまそーだな、…何もかも」


気がつけば、彼女を畳の上に押し倒していた。アルコールも相まってか、最近気持ちの制御が上手く出来なくなってきている気がする。照れたような顔で眉を顰めるなまえを見下ろすと、目に付いた赤く小さな耳に徐に歯を立てる。いつも腫れた蕾にするように、耳朶を優しく舐めあげると、漏れる彼女の吐息。


「本当、耳好きだよな」


次第に大きくなる吐息。耳にフゥと息を吹きかけると、震える肩がいじらしい。思わず緩んでしまった口元を隠すように、自身の唇でなまえの唇を包み込んだ。

…もっとなまえが欲しい。

舌を割り入れて彼女の舌を追い回すと、負けじと俺の舌を動きに合わせてねっとりと絡みつく。

…何で、こんな気持ちにさせるんだ。

彼女の舌先に歯を立てると「んっ」と痛みを感じた彼女の声が耳に届く。そんななまえに小さく笑みを向けた。


「あー、どこもかしこも、うまそーな匂いがする」

「…甘いの、好きなんですか?」

「まァな」


風呂上がりなのか、しっとりと湿った彼女の首筋に舌を這わせた。ゆっくり彼女を覗き込むと、求めるような瞳に、俺の心が揺れた。

…どうせ、手に入んねーくせに。


「好きだ」


…なまえが好きだ。お前は男なら誰でもいいのかもしんねーけどな、俺は、お前じゃなきゃダメなんだよ。
言えるわけもない言葉を飲み込み、その瞳を見つめると、僅かに彼女の瞳が揺れた気がした。




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