beniiro tear | ナノ


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逃げるようにスナックお登勢を飛び出してしまった私は、家に着くなり段ボールに囲まれた部屋に倒れこんだ。頭の中では先ほど新八とお登勢に言われた言葉がぐるぐると渦のように回っていた。

彼をどう思っているか、なんて愚問だ。でも、なぜそんな質問を私に向けるのか、それがわからなかった。何か彼に言われたんだろうか。でも、何を?

『普通じゃない関係だったからかい?』

そして、お登勢さんはきっと私たちの関係を知っている。なぜ、彼がそんな話をわざわざお登勢さんに話したのか、それもわからない。突然の出来事に頭が回らない。畳まれた布団に顔を埋めながら、思わずため息をついた。

もしかして、万事屋さんは、私を?
…なんて考えるだけ、無駄だ。彼はそんな素振り少しも見せなかったし、何よりあの日のことを思い出せば、そんな淡い期待はすぐに消えて無くなった。あの日の彼の冷たい眼差し、冷たい言葉、乱暴な愛撫。そして、最後の捨て台詞。何を思い出しても、心がキツく握り潰されるような感覚に陥る。


「…銀時、さん…」


それでも、優しい彼は確かにここにいた。優しい瞳で私を見下ろし、優しい笑みを浮かべて、優しく私を愛でた。埋めた布団を握りしめると、私の瞳にはまた懲りずに涙が浮かぶ。情事の時にしか、呼べなかった彼の名を呟いて、何度も優しかった銀時を思い出した。

もう戻れない。あの幸せな日々に戻れないなんてこと、わかっているのに。この部屋にいると、何度だって蘇ってきてしまう。何度も会いたいと、この気持ちを伝えたいと、そう思ってももう彼には触れられないのに。


「…好き、銀時さん、…あなたが、好きです…」


あふれる涙と共に、譫言のように私の口から伝えられなかった言葉が溢れた。




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