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「なまえ、好きなもん食えよ。つってもこれお前んとこの店の金だけど。オイ!神楽、テメェは頼みすぎ!!!」
「は、はぁ」
向かいに座る銀時に優しく微笑まれ、私はその視線から逃げる様にメニューに目を落とす。横で神楽ちゃんはとんでもない量の注文をしながら、銀時に小突かれている。無難にオムライスを頼んだ私に、困った様な顔で新八が笑いかけた。
「なまえさん、ごめんなさい、騒がしくって。」
「あ、いいんです。私仕事以外であんまり人と話すことないから、とても新鮮」
「お前友達いないアルか?」
サラッと毒を吐く神楽に、新八は即座にチョップを入れる。「なにすんだよクソメガネ!」と応戦するも、新八は私に「すみません」と申し訳なさそうに謝った。
「何、お前友達いねェの」
「ちょ、銀さんまで!」
「新八くん、いいの。本当に一人二人しかいないし、あまり遊びに行くことも少ないから。事実といえば事実」
「ふーん。寂しくないアルか?」
「たまにはそう思うけどね」
何だか同情の眼差しを向けてくる三人に、私は苦笑いをする。別にそういう意味で言ったんじゃないし、結構一人でいることも好きなんだけど…なんて言っても、もはや三人の耳にはただの強がりにしか聞こえないであろう。
「ま、なんだ。うちはいつでもこんなだからよ、寂しくなったら遊びに来いよ」
「手土産はちゃんと持ってこいヨ」
「確かに恥ずかしながら、万事屋はあんまり仕事がなくって、暇してることが多いんです。だから、なまえさんも気が向いたらいつでも来てくださいね」
うん、やっぱり同情されている。否定しようにも、三人があまりに優しい顔で私を見るもんだから「ありがとう」と呟くしかなかった。
「なまえは彼氏とかいるアルか?」
「お、よくぞ聞いた、神楽ちゃん」
運ばれてきた料理をどんどん胃袋に入れていく神楽が、私の顔をチラリと覗く。その言葉に銀時まで乗っかる始末だ。
「生憎、そういう縁がなくって」
「そうなんですか、意外ですね。なまえさんくらいの美人さんだったら、彼氏の一人や二人いてもおかしくないのに」
「新八くん、お上手ね。よかったら、どんどん食べて」
「いや、俺の金だからね!俺の奢りだからね、なまえちゃん!」
私の言葉にピシッとツッコミを入れる銀時に、思わず笑みがこぼれる。そんな私を見て、銀時も目元を緩ませた。その時私の心の奥が、ジンと熱くなった気がした。
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