beniiro tear | ナノ


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何の当てもなく、フラフラとかぶき町の町を歩いていた俺の頭の中は、一人の女のことでいっぱいになっていた。

何度考えたところで、結末は変わらない。そんなことはわかりきっているのに。ああしとけばよかった、こうしとけばよかった、そんな愚かなことを考えては心が深く沈む。後悔先に立たずとはよく言ったものだ。どれだけ頭の中でやり直したところで、現実は何も変わらないのだから。後悔なんて、するだけ無駄なのだ。

ふとすれ違うカップルや夫婦を見て、何故俺たちはこうなれなかったのかと、疑問が浮かぶ。それもまた、わかりきった答えがある。傷付くのを恐れて、自分の気持ちを伝えられなかった、俺のせいだ。俺は彼女の言葉に乗っかって、あの日々を送ってきただけの、…腰抜け。彼女の年や連絡先、好きな食べ物すらも聞けずに、一時の時間で満足していたただの腰抜けなのだ。自分の気持ちすら伝えることもできなかった俺が、彼女の気持ちの何を知れるというのだろうか。

あの日、問いただせばよかったんだ、どんな答えが返ってきたとしたって。そのポリ公ともできてんの?俺だけじゃねェの?なんて、どんなに格好つかない言葉でも、言ってやればよかった。


「…はァ」


そんな余計な言葉より、伝えなきゃなんねェことがあったはずなのに。「好きだ」とたったその一言だけで、全て伝わったというのに、何故。


『知らねェよ、こんな女』
何てつまらない意地を張っちまったんだろう。

『誰でもいいのかよ』
俺が知ってる限り、なまえはそんな女じゃねェ。

『もう飽きた』
そんなことが、言いたかったわけじゃねェのに。


何度となく浮かぶ、彼女の笑顔。それについて回るように、すぐに彼女の顔は大粒の涙を流して、俺を拒絶する。気持ちを伝えて傷つくのが怖かったくせに、結局何もできないまま、彼女を失ってしまった。

…俺は、なんて格好悪い男なんだろーな。





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