beniiro tear | ナノ


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そうして終始困ったような顔をしたなまえを連れて、ファミレスにやってきた俺たちは他愛のない話をしながら料理が出てくるのを待っていた。
時折なまえに視線を送ると、また困ったような、恥ずかしそうな、何とも言えない顔で俺の視線から逃げるように顔を俯かせた。それがたまんなく可愛くて、ついついぼんやりと彼女を見つめてしまった。


「お前、友達いないアルか?」

「神楽ちゃん!!!」


そんな神楽の言葉に我に返った俺は、謝る新八を押しのけて、なまえの方へ視線を移した。


「何、お前友達いねェの」

「ちょ、銀さんまで!」

「新八くん、いいの。本当に一人二人しかいないし、あまり遊びに行くことも少ないから。事実といえば事実」


何でもないような顔でそんなことを言ってのけるなまえが、何だか格好良く見えた。気高いというか、何というか、そう…魅惑的な女。きっと本人が気付いていないだけで、きっと彼女は高嶺の花と言うような存在ではないのか、と思った。


「ふーん。寂しくないアルか?」

「たまにはそう思うけどね」

「ま、なんだ。うちはいつでもこんなだからよ、寂しくなったら遊びに来いよ」


そう言って俺が笑いかけると新八と神楽も俺に同調するような言葉をかけた。少し恥ずかしそうに「ありがとう」となまえも笑うもんだから、心臓がぐっと掴まれたように痛くなった。
次々に運ばれてくる料理の殆どが神楽の頼んだものだった。神楽に文句を言うより先に、神楽の方が口を開いた。


「なまえは彼氏とかいるアルか?」


俺は「よくぞ聞いた、神楽ちゃん」と心で呟いたはずなのに、思い余って声に出してしまったようだった。ジト目で俺を見る新八に気付かないふりをして、なまえの言葉を待った。


「生憎、そういう縁がなくって」

「そうなんですか、意外ですね。なまえさんくらいの美人さんだったら、彼氏の一人や二人いてもおかしくないのに」


俺はその言葉に、内心本日二度目のガッツポーズをキメてしまった。新八の目線が痛く突き刺さるから、俺はにやけてしまっているのかもしれない。


「新八くん、お上手ね。よかったら、どんどん食べて」

「いや、俺の金だからね!俺の奢りだからね、なまえちゃん!」


なまえの言葉に図らずもツッコミを入れてしまった俺に、彼女は優しく破顔した。また心臓が痛く音を鳴らす。それを隠すように微笑んだ俺は、この胸の痛みの原因を、理解してしまっていた。





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