▼ Chapter2
空気の澄んだ漆黒に包まれた夜の道。俺は一人スクーターを走らせる。
飲みたくもない酒を浴びて、向かう先は今宵も同じ。誘われるように、俺は健気にその道を通い続けている。
…また来ちまった。
そんなどうしようもない独り言を浮かべて、見慣れた長屋の下にスクーターを止めると、階段を上がった。高鳴る胸を抑えるように、深呼吸をする。
いつものように、戸を何度かノックをすると、部屋から小さく足音が聞こえる。開けられた戸からこちらを覗いのは、眠っていたであろう、少しぼんやりとした無防備な女。俺を捉えるなり、優しい声で俺を呼ぶ。その声が耳に届くと、俺は自然と微笑んでいた。
そうして、俺は今夜もまた、この女を抱く。
紅色の涙
side gintoki
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