beniiro tear | ナノ


▼ 2/2




「いッ!やぁ、…あっ、やぁあっ」


十分に濡れていないそこに、銀時の硬い肉棒が侵入するなり、私はあまりの痛さに銀時の腕に爪を立てた。構わずに律動を始める銀時の瞳が、どこか悲しそうで。私はその表情を見たくなくて、強く目を瞑った。


「やめて、…っ銀時さ、…あっ」


…なぜ、こんなことになってしまったのだろう。
なぜ、彼はこんなことをするのだろう。

愛の言葉こそなかった私たちだったけれど。こんな独りよがりの行為をされることだってなかった。いつも優しく微笑んで、私の全てに優しく触れて、まるで恋人同士かのように、甘い時間を過ごしていたのに。それなのに、何故、そんな顔をするの。


「嫌、あぁッ!こんなの、いやぁ…っ」


とうとう顔を手で覆い、嗚咽をあげて涙を流す私に、銀時の動きが止まった。

…愛されていなくたっていい。彼が優しくしてくれるなら。一時でも私を必要としてくれるなら。私の独りよがりの気持ちでも、よかったのに。


「…チッ」


そう舌打ちをしたかと思えば、繋がったそこから自身を引き抜いた。そして立ち上がり、着流しを整え出した銀時を見上げると、また冷めた瞳で私を見下ろした。


「萎えた」

「…えっ?」

「もう今日で終わりにするわ」


銀時の言葉に、耳を疑った。
…今日で、終わり?それって、もう会わないってこと?
堪らずに上半身を起こして、銀時と着流しの裾に手を伸ばしかけたが、叶わなかった。


「…もう、飽きた」


目を見開き、呆然と銀時を見つめたまま、動けなくなってしまった。「じゃあな」そんな味気ない言葉を残して、玄関へ向かう銀時から目が離せない。呼び止めることも出来ないまま、銀時は部屋を出て行った。


…飽きた?
じわじわと言葉の意味を理解した私は、気が付けば、自嘲するように笑っていた。こんな形で、終わりを迎えるなんて思ってもみなかった。言われてみれば、私は彼に求められるがままに抱かれてきた。その彼が、私を拒絶するということは、この関係の破滅を意味しているんだと、今更理解した。


「…呆気なかった」


そんな強がった台詞を独りごちたところで、私の心は少しも納得できていなかった。その証拠に、瞳からハラハラと涙が溢れ落ちる。


「っ…」


長くて細い指。男らしくしなやかな筋肉。
熱く柔らかい舌と唇。汗ばんだ首筋。
ふわふわと揺れ動く髪に、妖艶な笑顔。
甘くて低い私の名を呼ぶ声。

一つ一つ思い出しては、頬に涙が伝う。
…私は勘違いをしていたんだ。私に向ける優しさも、笑顔も全て。私だけのものなのではと、勘違いをしていた。

本気になってバカを見るくらいなら、この関係の方がいいなんて、私は嘘つきだ。

…もしかしたら、この恋が叶う日が来るかもしれない。そんなささやかな希望を、持ってしまっていたのだから。





prev / next
bookmark

[ back to main ]
[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -