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ぼんやりとした意識の遠くで、カチャカチャとベルトを外す音が、耳に届く。銀時の香りが染み付いた、着流しが私の頭元に投げられたところで、銀時は自身を私のそこにあてがうと、一気に侵入した。
「や、あぁっ、!」
「…バカやろ…、力抜けよっ、」
二、三腰を打ち付けると、舌を出して私の唇をペロリと舐める。それに応えるように、彼の唇に吸い付くと、銀時は目を細めて喜んだ。
「お前、誰とでも、こーいうことすんの、…っ?」
「…万事屋さんこそっ、」
肌と肌が当たる音が、静かな寝室内に響いて、羞恥に耳を塞ぎたくなる。硬く太いそれが、奥を突くたびに、私はまた意識を手放しそうになる。両腕を掴まれて、私を組み敷くと、空いた膨らみにまた舌を這わす。
「やぁ、万事屋さっ…あっダメ、それ、ダメっ…」
「こんなときくれェ、ちゃんと名前で呼べってんだ…、」
激しくなる律動に、脳が揺さぶられて思考がままならない。高く啼き続ける私を構いもせずに、汗を流して、時折吐息を漏らしながら一心不乱に腰を打ち付ける銀時に、私の身体が、心が、どんどん酔っていく。
「あっ、や、あぁ…!銀時さ、ぁ…銀時さんっ」
「クソが、…ヤベェ、くっ…」
「やっ、あぁあっ、イク、イッちゃう、銀時さ…あぁっ…」
私が達したとほぼ同時くらいに二、三激しく奥に突き立てて、勢いよく引き抜き下腹部に欲をぶちまけた。
肩で息をする銀時をぼんやりと見つめて、徐にティッシュを差し出す。彼はそれを二枚ほど引き抜いて、汚れた私の腹を拭き取る。
雰囲気を楽しむ間もなく、乱れた衣類を整えて、銀時立ち上がる。私は慌てて鞄に手を伸ばして、財布から何枚か札を取り出して、銀時に差し出した。
「…これ、報酬です。」
「…いらねェ」
「えっ?」
私を見下ろす銀時の表情が、陰になってよく見えない。思わず聞き返した言葉に、僅かに笑ったように見えた。
「その代わり、また気が向いたとき、抱かせてくれよ」
そう言って私に背を向け、部屋を出る銀時の背中を見つめる以外に私に出来ることはなかった。
残されたその言葉が耳にこびりついて、自分の行動の愚かさを、ひしひしと実感した。
芽生えた恋心を簡単に告げられるほど私は若くもなく、綺麗な心を持ち合わせていたわけでもなかった。彼を独占したいと思えるほど、恋に溺れるつもりも、恋に泣くつもりも、この時の私にはなかった。
それでも、他に選択肢はなかったのかと、今でもこの日を思い出しては後悔している。
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